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映画、テレビ、演劇、デジタル…ベトナムのエンターテインメントが急成長を遂げている。映画は興行収入が急増し、テレビではリアリティ番組が大ブーム、演劇は着実に顧客を獲得し、デジタルコンテンツが新市場を築く。豪華な業界の第一人者たちが内情を語る。

 
 

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伸び続けるベトナムの映画市場。VN EXPRESSによれば、この4~5年間の年間興行収入の成長率は35~40%で、2014年は約8300万USD、2015年は1億500万USD以上になり、2016年の成長率は25~30%と見込まれる。ベトナム初の民間企業Galaxy Studioがその理由を語る。

館数と本数が増加選択肢の拡大で観客増

「この数年で映画市場は急速に成長しています。昔は映画館での鑑賞は贅沢で、ホーチミン市やハノイなどの都会でしかできない趣味でしたが、現在ほとんどの興行会社は各地方まで活動範囲を拡大し、弊社も2016年はホーチミン市以外に映画館3館を出しました」

Galaxy Studioは民間企業の映画産業への参入が認められた2003年に先駆者として設立され、映画館「Galaxy Cinema」の運営、映画製作、映画配給の3つの事業を中心に展開している。

Galaxy Cinemaはベトナムで初めての国際基準に準じた民間映画館であり、2005年からホーチミン市、ハノイ、ダナン、ベンチェを含めて7館をオープン。全館にドルビーサラウンド7.1、デジタル2D、3Dスクリーンを完備しており、合計で毎年約200万人の来場者があるという。

映画制作・配給の事業では、「Galaxy Distribution」が20世紀フォックス、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント、ワーナー・ブラザースと配給契約を締結し、『007 スペクター』や『X-MEN アポカリプス』など多くのヒット作を上映。同時に、Galaxy Studioも国内映画の制作、共同制作、配給を手掛けている。

9「Galaxy Cinema」の館内

中でも代表的なのは、2015年の国産映画興行収入1位(約800億VND)となった『草原で黄色い花を見つける/Toi thay hoa vang tren co xanh』。約130万人の来場者を集め、国内外で数多くの賞を受賞した。

この映画もそうだが、ベトナムではこの数年、特に国産映画が人気を呼んでいる。今年は『ベトナムの怪しい彼女/Em La Ba Noi Cua Anh』がベトナム映画の興行収入で歴代1位となり、2014年公開の『明日にオマカセ2/De Mai Tinh 2』の記録も抜いた(2016年11月現在)。多くの観客が国産映画を応援したおかげで、国産映画と海外映画の割合が現在では6:4となり、バランスが取れるようになったとMs. Dung。これからも「国産映画びいき」は続くと見ている。

「映画館数の拡大に伴い、上映映画本数も増加しています。5年前は1週間平均1~2本だったのが、現在は5~7本の映画が上映され、観客に多くの選択肢を提供しています。ベトナム映画市場は若々しく、活発な市場になっており、将来は世界的に大きな映画市場を上回ると期待しています」

来場する観客は様々だが、高校生や大学生、会社員、家族連れが多いという。Ms. Dungは「映画の種類が豊富になり、年齢を問わず、誰もが好きな映画を選べるようになったから」と分析する。

制作側と観客側どちらも国産を応援

10『草原で黄色い花を見つける』のポスター

11『ベトナムの怪しい彼女』のポスター

12『明日にオマカセ2』のポスター

ベトナムで好まれる映画のジャンルは、『キャプテン・アメリカ』や『バットマン』などのアクションやスーパーヒーロー系で、次いで『世界一キライなあなたに』や『ワン・デイ 23年のラブストーリー』などのロマンチック系とラブコメ系。最近はアニメ作品も人気で、代表作は『アナと雪の女王』、『ファインディング・ドリー』だそうだ。

こうした海外映画は放映権を得てベトナムで配給するわけだが、文化の違いと国内法律上の規定で一番苦労するという。

多くの配給会社が海外映画を輸入したいと考えても、政府機関の検閲条件を満たさない場合は、例えば暴力的なシーンをカットせざるを得ない。結果として、観客に内容がうまく伝わらなくなるケースもある。また、「18歳以上」など年齢制限がある映画は、どうしても興行収入が減少する傾向にあるそうだ。

一方、国産映画の制作にも課題があり、一番の問題は資金の調達だそうだ。高品質の映画を制作するには設備や機材、プロデューサーなどのスタッフや出演者となるキャスト、撮影場所、撮影許諾料などから制作後のマーケティング、宣伝費にまで膨大な投資資金が必要となり、制作側にとってはチャレンジングでありリスキーだ。優秀な制作チームが安心して、芸術性の高い映画を制作するには、制作会社が常に投資家に呼び掛けて、資金を集める必要があるという。

「ですが、映画市場が急成長している背景には、制作側が観客の好みをどん欲に吸収し、テイストをきちんと調べて、現代的な生活により近い内容の作品を生む努力があります。一方で観客はこうした作品に同感し、国産映画を一層応援するようになった。これが制作側のモチベーションを高める好循環が続いています」

同社は引き続き、映画館の運営、映画制作、映画配給の3事業に注力し、ベトナム市場のトップ企業を目指していく。Galaxy Cinemaは2017年には、全国で10館を新たにオープンする目標を掲げた。映画制作では勢いのある国産映画を応援するために、制作会社として制作チームと連携し、ベトナム人の観客ための作品に投資していく計画だ。

「こうした映画作りこそが、Galaxy Studio設立当初からの基本方針なのです」