任して2年経った駐在員と話していた時のことです。彼は言いました。

「ようやくわかった! ボクシングをプロレスのリングでしていたことに!」

赴任当初は「ベトナム人はルールを守らない」、「残業をしない」などの「なぜ?」が多く、「ベトナム人はだからダメなんだ!」と一方的に思っていたそうです。

ただしばらくすると、自分とベトナム人が大切に思うことのギャップを感じ始めて、よーく観察してみると、「ルールが違う競技」をしていたことに気づいたと言うのです。「ルールに文句ばっか言ってる上司と思われてたんだろうなー」と。そこから仕事の仕方が変わったようですが、私もなるほど!と思いました。

ベトナムと日本のビジネスのリングは、プロレスとボクシングの違いに似ています。日本人はストイックに練習し、減量してしっかり身体を作り、「ボクシングをやるんだ!」とベトナムに来ます。が、ベトナム人はマスクマンもいますし、5秒以内なら反則OKで、場外乱闘もありです。時には中立のはずのレフリーがいきなり凶器を渡す悪役になったりもする。また、1回負けたら引退なんてこともなく、何回負けたって観客を沸かせたら勝ちなのです。

日本人はボクシングのルールで戦ったら、きっと強いのでしょう。ただ何度も言いますが、このリングにはそのルールがないのです。あなたが歯を食いしばり、成長して、チャンピオンになったリングじゃないのです。

どちらがいいのか、悪いのかの話ではなく、ここが理解できない限り、ベトナムのリングでチャンピオンになるのは難しいでしょう。そして実は仕事だけでなく、日越の全てにおいて言えるのではとも思います。

加藤 将司
Kato Masashi
JACリクルートメントベトナムManaging Director。大学卒業後、大手人材紹介会社を経て、一貫してベトナム人材の紹介や採用&育成に関わり、今年で12年目。2013年6月より現職。
www.jac-recruitment.vn