急増が続くベトナム人観光客の訪日アウトバウンド。 2017年の訪日人数は過去最大の30万人が見込まれている。彼らはどんな人々で、日本のどこへ行き、何をしているのか。 日系企業のマーケティングに、彼らの消費動向を活かしてほしい。
 
 

訪日するベトナム人旅行客にゴールデンルート以外の地域へも足を運んでもらおうと、積極的に誘致へと取り組む北海道や中部地方9県。訪日キャンペーンのイメージキャラクターに人気歌手が起用されたことで、今後の地域活性化にも期待がかかる。

知られざる日本を紹介 地方自治体がアピール強化

訪日外国人旅行者の誘致、促進に取り組むJNTOハノイは2017年6月、ハノイとホーチミン市に在住する20~50代の訪日旅行経験者209人を対象に、インターネットでアンケート調査を行った。訪問した都市の回答では、東京(全体の86%)、大阪(同58%)、京都(同46%)、富士山(同37%)と、日本観光のゴールデンルートと呼ばれる都市・地域が上位を占めた。

「これは旅行者の7割近くがゴールデンルートを巡るツアーに参加しているからであり、訪問地が必然的に偏ってしまうのが要因でしょう。今後日本を観光したいと思っている意向者366人にも調査を行ったところ、同4都市・地域を訪れたいという意見が圧倒数でした」

※訪問者:日本旅行を既に経験した人 意向者:今後日本旅行に行きたいと考えている人

訪日経験者の世帯月収は、14.4万~36万円に集中。訪問者と意向者との月収の差が大きいところにも注目

そんな状況を打破しようと動き始めたのが、北海道と中部地方の9県だ。主要観光地を訪問済みのベトナム人に向けた次なるアプローチとして、またチャーター便などを利用した旅行価格の手頃さ、珍しい地域を訪れるという話題性もウリにして、積極的に旅行客の誘致に向けて取り組んでいる。

「北海道にはベトナム人の心をつかみそうな花いっぱいの富良野、真っ白な雪景色など魅力が豊富です。中部地方では、名古屋は通過してもそこから北上する人は少ないというのが現状です。そこで名古屋へは直行便が就航していることを利用し、三重から愛知を経由して北へ岐阜、富山、石川へと龍の如く昇るルートを『昇龍道』と名付け、各観光地を積極的にアピールしています」

最近は航空会社や旅行会社と協力し、航空券の特典や旅行が当たるキャンペーンを実施するなど、様々なプロモーションを展開中だ。

著名人訪日で人気を後押し 確実視される旅行客増

2017年10月にイオンモール・ロンビエンで実施された即売イベント

ベトナム人の訪日旅行者数の増加には、人気歌手のヌー・フック・ティン(Noo Phuoc Thinh)氏も一役買っている。彼は2017年6月に「ビジット・ジャパン アンバサダーinベトナム」に起用され、日本を訪問しては日本食や日本文化を堪能。その様子がJNTOのWebサイトやフェイスブックで公開されると、2000件以上の「いいね!」が付くこともあり、効果は絶大だ。

「ヌーさんはアンバサダー就任前から日本と深く関わっており、JNTO協力のもと、2014年は大阪、2015年は石川、2016年は九州でミュージックビデオの撮影が行われました。これらの合計再生回数はなんと約8000万回以上という人気ぶりです! 2018年にリリースされた新曲では北海道や昇龍道の映像がふんだんに使用されており、各地域の知名度向上が期待されています」

またJNTOのWebサイトでは、チュック・ディエム(Truc Diem)氏、ジエム・ミー(Diem My)氏、ドン・ニー(Dong Nhi)氏ら人気女性タレントの訪日の様子も紹介しており、「憧れの地・日本」という特別感を与えている。

「格安航空会社(LCC)が台頭したことで旅行の低価格化が進み、ベトナム人の平均収入も高まっていることから、日本旅行は以前よりも行きやすいところになっています。2017年10月にイオンモール・ロンビエンで日本旅行の即売イベントを実施したところ、予想を上回る申し込みがありました。日本旅行に対するプレミアム感は維持しつつも、需要はしっかりと拡大してきたいですね」

2018年は日越外交関係樹立45周年。観光を通じて、両国がより一層身近な存在になるよう、今後も様々な活動を行っていく予定だ。

ガイド付きツアーが主だが、個人旅行やインセンティブ旅行の割合も年々増加