越の国の法律相談 No.038

ベトナムでは
不倫にもペナルティ

ベトナム婚姻家族法は、既婚者が配偶者以外の者 (既婚者・独身者)と、または独身者が既婚者と、結婚・夫婦同然に同棲することを禁止しています。これに違反すると300万VND以上500万VND以下(2020年の罰金額引き上げ前は100万VND以上300万VND以下)の行政罰金の対象となります。
 
さらに、ベトナム刑法には一夫一婦制度違反罪という罪があります。上記のベトナム婚姻家族法の規定に違反する者が、
①既婚者を離婚に至らせた場合、または行政罰金処分を受けた後も関係を継続した場合に、戒告・1年以下の非拘束矯正・3ヶ月以上1年以下の懲役
②既婚者の配偶者または子が自殺した場合、または裁判所の後婚の取消・同居中止決定を受けた後も関係を継続した場合には、6ヶ月以上3年以下の懲役
という法定刑が定められています。
 
では、在越外国人にもこれらの制裁が科されるのでしょうか。たとえば、外国人とベトナム人の夫婦の一方の”不倫“は対象となります。外国人同士の夫婦の場合については明確な規定がなく、専門家によっても議論されていないようです。

日本の「姦通罪」
「重婚罪」とは?

日本では、明治時代から戦前までは、既婚女性が「姦通シタルトキ」は、女性と相手の男性を2年以下の懲役に処するという「姦通罪」がありました。
 
現行憲法の下では、両性平等に反するため、既婚男性の姦通も処罰するか、同罪を廃止するかが議論された結果、1947年に廃止されました。
 
現行刑法には、既婚者が重ねて「婚姻」したとき、その既婚者と相手方を2年以下の懲役に処する「重婚罪」があります。
 
この「婚姻」は法令婚のみを指すと解釈されているため、”不倫“は対象外です。実際に処罰された例は、偽造の離婚届を提出した後に婚姻届をしたケースなどごくわずかです。
 
ただし、日本と外国でそれぞれ別の相手と有効に婚姻が成立すれば「重婚罪」に該当するという見解があり、国際結婚における法的リスクとして十分に注意が必要です。

 

小幡 葉子 Obata Yoko

日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。

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