コンシューマー製品の活躍で目立つ日系企業が多い中、優秀なB to B製品を提供する企業も数多い。一般的な知名度は低くても、産業を支える名脇役だ。そんな「知られざるB to B企業」の、実力と底力をぜひ知ってほしい。

 

販売会社として2011年に設立された三菱電機ベトナムは、2013年からFA事業における販売とカスタマーサービス・サポートをスタート。代理店経由の20年の実績を拡大させ、2016年度の売上を前年度比で倍増させた。

受配電設備機器とFA 昨年度は売上が倍増

三菱電機ベトナムは冷蔵庫、扇風機、換気扇、エアコン(家庭用・業務用)など主にBtoC事業を当初は展開し、2013年からBtoBのFA事業を始めた。そのカテゴリーは大きく2つに分かれ、一つは「配電制御機器」。ビルや工場など建屋における電気の安定供給の要となる、受配電設備機器や省エネ支援機器などで、ブレーカーが中心となる。

PLC「iQPlatform」

もう一つは「FA機器」。各種装置の制御・自動化のためのPLC(プログラマブルロジックコントローラ)や表示器等のコントローラ機器、産業機械の駆動源である産業用モーター、高精度の位置決め制御に用いるACサーボ、各種機械の最適制御と省エネを実現するインバータ等の駆動制御機器など。生産システムを支えて生産性や品質を向上させる機器群で、主力はPLCとインバータという。

「生産ラインを作るときに日本で機器を組み込んでくる場合もありますが、工場の拡張やリニューアル、生産ラインの増加・改善などでの現地ニーズも多いです。特にローカルスタッフの育成や権限委譲などのローカライゼーションが各社さんで進んでおり、現地エンジニアからの注文が増えています」

また、ベトナムでは労働集約型の加工・組立て産業が多いが、生産コストだけでは競争が難しくなりつつあり、自動化、省人化、品質安定化のための産業用ロボットの引き合いも多くなってきたという。

ショールームに置かれた産業用ロボット「MELFA」

FA事業の顧客企業は約1000社。割合は日系および外資系(韓国、台湾等)が4割、ローカルが6割で、最近は建屋系の案件が多いのでローカルが増えたという。

配電制御機器は日系とローカルの製造業、コンドミニアムや複合商業施設などで採用され、最近ではベトナムの電力会社や通信会社のインフラ設備に選ばれるケースが増加。FA機器は日系では完成車、部品、電子機器、飲料・食料などほぼすべての業種のメーカーで使われ、ローカルは精米機やタピオカのメーカー、外資系では液晶や携帯電話などのメーカーが目立つという。

「ご相談は様々で、お見積りの依頼から製造ラインでの歩留まり減少、省エネによる電気代削減などまであります。生産ラインに直結しますから、故障などで『すぐにでも』というオーダーもあり、スピード対応を心掛けています」

同社の2016年度の売上は前年度比で倍増。全分野で万遍なく業績が良く、配電制御機器系とFA機器系が同比率で伸びているそうだ。

きめ細かいサービス 連携で他分野の事業

幅広い製品ラインアップに加えて、きめ細かいビフォア・アフターのサービスが同社の特徴だ。FA事業ではホーチミン市とハノイにセールスとサービス部門が常駐し、代理店も含めて全土をカバー。特に技術サポートを重視しており、「FAセンター」において日本人とベトナム人の専任スタッフが技術的な問合せ、エンジニア派遣、修理、定期的なトレーニングスクールの開催などをしている。

FA機器を修理する同社のエンジニア

「現地エンジニア向けにはeラーニング等のほか、『FAトレーニングスクール』をホーチミン市とハノイで開き、各種機器の基本操作から応用プログラミングまで、実機を用いてベトナム語で教えています」

ベトナムは日本に比べて人材の流動性が高いこともあり、エンジニアの育成が課題で、トレーニングや教育がより求められているという。同社は現地工業系大学へも支援しており、昨年は5大学、今年も5大学にPLC、表示器、インバータ、ACサーボなどを教育用機材として無償提供。奨学金等と共に、未来のエンジニアに技術サポートを実施している。

日系製造業を中心に関心が高まっているのが、IoTを活用した生産性向上だ。三菱電機では2003年から「e-F@ctory」というコンセプトで、FAとITを融合させた開発、生産、保守の全般的なトータルコスト削減と、改善活動の支援を提唱している。

「日本の導入事例をご紹介して、『工場まるごと最適化』をぜひ実現したいですね。また、機器の販売だけでなく、機械装置メーカー、エンジニアリング会社、システムインテグレータなど多様なパートナー企業と提携して、単独でご提供できない機械装置などの提案もしたいと思います」

また、これからはグループ会社の三菱エレベータベトナムとも連携を強化し、今後は三菱電機ベトナムの業務用エアコン、換気や受配電機器などと組み合わせた、オール三菱のBMS(ビルマネジメントシステム)も進めたいと考えている。

「FA機器は企業価値を高める『産業界の黒子』。ベトナムのポテンシャルは極めて高いと思います。現在の事業をしっかりと進めながら、多様なビジネスを展開させていきます」