週末エンターテインメント No.16


ベトナムでは3週間の外出禁止が終わり、警戒しながらもシティライフを楽しむ人たちが街に戻りつつある。このまま、数ヶ月前のような「日常」は戻ってくるのだろうか。

例えば、「食べる」ということについていえばこの数ヶ月でレストランが窮地に立たされ、デリバリーが盛り上がってるのは皆さんご存知の通り。そして、その影に隠れてもうひとつ大きなトレンドがある。自炊だ。今までは、自炊していなかった層が、ステイホーム期間に時間を持て余し自炊にチャレンジするという現象が世界中で同時多発的に起きている。

面白いのは、毎晩、寿司とワインを楽しんでいた経営者層が自炊を始めたということだ。僕はスパイスからカレーを作り、友達のIT経営者はとろとろハンバーグにはまり、投資家は2週間かけてリンゴの皮を剥けるようになった。素人料理と侮ることなかれ。彼らは経営のプロで、ヘンタイ的に勉強熱心だからだ。ヘンタイ友達の1人は、食肉商社から肉の目利きを学び、極上肉を普通の価格で仕入れてローストビーフを作りメチャウマと喜んでいた。ここから新しい何かが生まれる予感がする。

ちなみに、前回はカウンターカルチャーとしての新しいヒッピー文化の兆しについて書いたが、ドンピシャリ。キャンピングカーの価格が700万円から4000万円に急騰しているらしい。身軽に動きたい人が増えているというわけだ。リーマンショックのあとにマンハッタンの隣町ブルックリンでオルタナティブ文化が花開いたのは偶然ではない。ちょっと遠くで新しい何かが生まれる。食ビジネスはデリバリー、テイクアウト、さらにその次へ。テーマは「移動×食」だと思う。もちろん、この変化は食だけではない。新しい「日常」が始まった。

 

小森 悠矢
ホーチミン市最大級のテレビ制作会社MCV Corp勤務。
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