週末エンターテインメント No.15


外出できない、人混みに行きたくない、隔離は絶対いや、怖い、食べたい、遊びたい。

世界の状況はどうであれ、人間の欲望が減るわけじゃない。株価が10分の1になっても、ご飯の量が10分の1になるわけじゃない。いつもと変わらないか、せいぜいおかずが1品減るくらい。どれだけ感染症が流行っても、みんなが修行僧のように瞑想と祈りで1日を終えることはできず、やっぱり友達とオンラインでダベりたい。デリバリーで飯を食い、オンラインセミナーで勉強し、オンラインフィットネスで体を動かし、YouTubeで暇を潰し、アダルトサイトで性欲を解消し、SNSで生活の工夫自慢と世の中を評論する。ギャーギャー騒いだって、やっていること同じじゃん。

いつもと変わらない欲望を満たすために、変わっていく世の中の仕組み。たまらなく興味深い。そして、やっぱり家に閉じこもるのは息苦しいので外出するのだけれど、繁華街には行けず、行き着く先は最高に換気の良い橋の上。何組もの若者が一定間隔で並ぶこの光景は、愛すべきベトナムスタイル。でもそんな若者の背中を見ながら、君らのエネルギーはこんなもんじゃないだろう、と聴きたくなってくる。

そういえば、アメリカの自由を愛するヒッピー文化は泥沼ベトナム戦争の暗いムードからの反動だって聞いたことがある。今閉じ込められている若者の欲望が解き放たれるとき、どんな文化が生まれるのだろうか?また繁華街に戻ってくるのだろうか。それとも、バイクで旅をする映画『イージーライダー』のように、スマホを投げ捨ててバイクでもっともっと遠くへ行くのだろうか。たまらなく興味深い。

 

小森 悠矢
ホーチミン市最大級のテレビ制作会社MCV Corp勤務。
クリエイティブなお仕事のご依頼はいつでも。
E-mail:y_komori@mac-c.co.jp