越の国の法律相談 No.005

2012年ごろより急増中の不動産商品

ベトナムの経済成長にともない、投資・セカンドハウス用の分譲リゾートマンションの人気が高まっています。また、ベトナムを訪れる観光客も、昨年は前年比約30%と著しく増加しています。

一方、ホテルなどの商業不動産デベロッパーは、物件を長期的に保有せず、すぐに分譲することで、ローンに頼らずに資金調達でき、あるいは投下資本を短期で回収できます。

このような状況下で、2012年ごろから、ホテルとして開発された物件を小口に分けてエンドユーザーに販売し、エンドユーザー自身が使用するほか、ホテルとして運営して、エンドユーザーに年8~10%程度の利回りを保証する「コンドテル」という不動産商品が売り出されています。

法令整備が追い付かずリスクが伴う場合も

2017 年は全国で2万戸以上のコンドテルが販売され、約半数がニャチャン市に集中しています。ところが、ここ数年で急増した商品形態であるため、まだ法令の整備が追い付いていない状態です。

まず土地法では、土地の用途は、居住、商業、農業、工業など単一の用途でなければならず、コンドテルのように「居住+商業」という複合的な用途は認められていません。  

そのため、現状では、エンドユーザーに対してピンクブック(土地使用権・建物所有権証明書)は発行されていないと見られます。

また、コンドテル事業を規制する法令がなく、ホテル事業収支の開示など、エンドユーザーの利益をどう保護するかも今後の課題といえます。

2017年ごろから、資源環境省・建設省が、コンドテルに関する会議を開催したり、法令改正の検討を始めたりしており、徐々に法令の整備が進んでいくと期待されています。

そのため、投資家としては、これらのリスクを十分に検討したうえで、自己の責任において投資判断をすることが重要です。

 

 

小幡 葉子 Obata Yoko
日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援
長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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