日本の常識にとらわれない、会社と会社の出会いの場を提供

ホーチミン市、ハノイを中心に不動産仲介業などを行うレオパレス21ベトナム。2019年6月、同社運営によるサービスオフィスがホーチミン市にオープンした。開業に至った背景のほか、これまでの歩みや今後の展望などを同社の佐藤氏に聞いた。

中小企業の新規進出が増加中
高まるサービスオフィス需要

――ベトナム進出の背景を教えてください

佐藤 ベトナム現地法人は2013年12月にホーチミン市に設立しました。設立はタイ現地法人設立と同時期で、弊社にとって初の東南アジア進出でした。弊社は日本において、寮や社宅、アパートの紹介などで約8000社と取引をしています。その中で東南アジアへ進出する取引先が増え、国外でもワンストップで弊社を利用したいという要望が増えたことが大きな理由の1つにあげられます。

――2016年8月、ハノイにサービスアパート「グランフェルテハノイ」を開業しました

佐藤 海外赴任者に快適な住宅環境を提供できるようにと、自社運営による「グランフェルテハノイ」を開業しました。特に新しくベトナムに赴任してきた方からの評判が非常に良いですね。例えば、和食店「箸や」の和朝食やミニマート「ハノイ商店」、マッサージ店「グランバーン」、アルソック社によるセキュリティー、家賃に自動付保される入居者損害保険はすべて日系企業によるものです。自社運営だからこそ、お客様の声も取り入れやすく、ジムやゴルフレンジも新設しました。家族向けというよりも単身者向けで、男性駐在員をターゲットに絞り、おかげさまで高稼働を維持しています。

――2019年6月にホーチミン市にサービスオフィスを開業しました

「グランフェルテハノイ」は、日本人向けのレストランやオフィスなどが多いバーディン区に位置。工業団地への通勤や空港方面への移動も便利だ

佐藤 ホーチミン市に新規進出企業が多いことを受けて、今から3年ほど前から自社運営によるサービスオフィスの開業に向けて準備をしてきました。条件としてはまず利便性の高い立地にこだわり、可能であれば1区で。1フロア貸し切りで24時間出入りができることでした。タイミングよく弊社が入居するリムタワーの25階に空きが出ると聞き、すぐに交渉をスタートさせましたね。リムタワーはホーチミン市内でも数少ないAグレードのオフィスビルであり、日本人が多く集まるレタントン通りの入り口にあるのも魅力です。

ベトナム進出を目指す企業にとって最初から大きなオフィスを構えることは難しい一方で、会社を登記するには住所が必要です。いざ構えても、会社登記が無事完了しなかったというケースが過去にありました。このサービスオフィスなら住所が登記できる個室は31室あり、椅子や机、インターネット回線など、業務に必要な設備を完備しています。価格は競合他社と比較してもリーズナブルな設定です。スタートアップ企業にはまず、こういったリスクの少ない施設での進出準備をおすすめしています。

また、同サービスオフィスにはコワーキングスペースも設けています。日本と同様に、近年はベトナムでも働き方がフレキシブルになってきていて、コワーキングスペースの需要が非常に高まっています。1日から利用できるので、ハノイからホーチミン市への出張、リサーチで数日滞在する、といった方にも利用しやすい場となるでしょう。

今後は両市ともにサービス提供
帰国生雇用に向けた事業も計画

CAPTION

――ベトナムならではの取り組みはありますか

佐藤 ハノイでは、日本へ建築人材として送られる技能実習生約90人をサポートし、日本の工務店の希望に応じてお手伝いしています。技能実習生を採用後、最初の5ヶ月で日本語を学び、残りの1ヶ月で日本から講師を呼び「足場を組む」、「壁芯の長さ」、「専有面積」といった建築専門用語を約300語教えます。日本の建築現場を知り、専門用語を覚えて各種図面が読める状態にしてからでないと日本へ送り出さないので、日本入国後即戦力として現場で働いてもらうことができます。

――今後の展望を教えてください

「レオパレス21サービスオフィス」の内装設計やIT、オフィス関連機器は日系企業によるもの。オフィスは25階で、市内を一望できる

佐藤 まずは開業したばかりのサービスオフィスを軌道に乗せるところからですね。特に、会社と会社の出会いの場を提供できるコワーキングスペースは、今後の成長戦略として大きく期待しています。日本では他社との交流をあまり好まない会社が多いように感じられますが、日本の常識ばかりにとらわれていては海外では成功しないでしょう。異業種の人とコミュニケーションをとってコミュニティーができ、ビジネスが拡大する、そんな付加価値を生み出す場を提供していきたいと思っています。現在、自社運営のサービスアパートがハノイに、サービスオフィスがホーチミン市にありますが、それぞれ希望していた条件の物件に出会えたことが開業に至った経緯であり、狙って分けているのではありません。弊社の条件に合うアパート、オフィスを両市で早急に事業化したいです。

また、日本へ送り出した技能実習生の多くが今後1~2年の間に凱旋帰国します。それまでに不動産分野だけでなく、彼らを受け入れられるような、新しい事業も立ち上げたいと思っています。

COMPANY INFO
2013年12月、ベトナム現地法人をホーチミン市で設立、2015年1月にハノイ支店を開設。不動産紹介・仲介のほか、サービスアパートやサービスオフィスの運営、建築人材の育成、3D建築パース図などにも取り組んでいる。2019年6月現在、アジア10ヶ国・地域に16拠点を展開。
代表取締役社長 佐藤 英伸
HIDENOBU SATO
1976年、栃木県生まれ、北海道旭川市育ち。大学卒業後にレオパレス21入社。営業部に所属し、関東エリア、中部エリアなどで支店長を歴任。2014年4月に国際事業部へ異動。中国・上海駐在を経て、2015年10月より現職。