【ベトナム経営】vol. 18
NTT Vietnam
NTT ベトナム
日本の成功事例をベトナムでも
幅広い投資で、可能性を広げる
NTTベトナムは2018年1月から2019年5月まで、ハノイ市内の私立小学校で授業支援アプリケーション「スマートエデュ(Smart Edu)」を使用したトライアルを実施した。ベトナムで教育支援事業を始めた背景や今後の展望を聞いた。
見通しを立ててコツコツと
長期的な視野、計画も重視
――NTTベトナムの設立は1996年。今年で23年目を迎えました
近藤 当時、日本電信電話(NTT)では海外事業の強化を検討していました。ベトナムに注目したのは今後の経済発展が見込めると判断したのと、丁度ハノイで電話のメタル回線の構築ビジネスがあったからです。その事業をNTTが引き受けたのですが、通信セキュリティー上の問題で外資系企業がベトナム国内に会社を設立して実施することは禁止されていたため、日本国内でNTTベトナム社を立ち上げ、ベトナム郵電公社(VNPT)とともに事業を推進する運びとなりました。そういった経緯があって、現在もNTTベトナムは東京に本社があります。15年と長期にわたる契約の中で、携帯電話が普及して固定電話の需要が大幅に減少するなど、当初想定していない出来事もありましたが、ベトナムの電話回線の普及や運営に十分貢献できたと思います。
――現在は光通信事業や、それ以外の事業も展開しています
近藤 15年にも及ぶ長期プロジェクトのおかげで、VNPT社に限らず、多方面で関係性を築けました。それを生かすため、契約満了後に向けて光通信事業を含む新しいビジネスを模索し、注目した1つがクラウドゲームでした。
光ファイバーを利用したブロードバンド回線をもってベトナムで役立つものは何だろうと考えた時にまずは映像だと考えたんですが、テレビはすでに普及済み。一方で家庭用ゲーム機が普及していないことに目を付けました。そこでOCGテクノロジーというVNPTグループとの合弁会社を2016年に立ち上げて、クラウドゲームサービス事業を始めることにしました。しかしスマートフォンが広く普及していることで、クラウドゲームがなかなか浸透していかないのが現在の悩みです。今後はより面白いゲームを配信するなどの打開策を講じることが必要だと感じています。
教育事業が今後の大きな柱
競合ない状況でも甘んじず
――教育ICT事業にも力を入れていますね
近藤 日本ではタブレットを使用したICT教育が拡大しています。NTT東日本では、デジタル教材が豊富なほか、電子黒板に子どもの回答を表示させられる機能などが付いて好評を得ている「テックキャンバス」という授業支援アプリケーションを導入して普及を行っています。それならベトナムでも今後期待できるのではないかと思い、このシステムをベースに、ベトナム向けにローカライズした「スマートエデュ」を開発しました。
まずはベトナム人の先生や生徒の反応を見ようと、2018年からハノイ市内の私立学校でトライアルを始めたところ、実際に使ってみた先生からは授業のシナリオを作りやすい、生徒からはみんなの答えや考えが見れたり、図形の授業が分かりやすいという声が多く寄せられました。保護者からは、楽しく勉強をしている姿を見て安心するという感想をいただきました。今はトライアルが終わったばかりですが、試験導入した学校から正式に取り入れたいと申し出があったので、いよいよ商用サービスを開始できます。
――ハノイの学校以外での反応はどうでしたか
近藤 ハノイの私立学校における「スマートエデュ」の様子がテレビで放映されると、ダナンなどの学校からもトライアルを受けてみたいと連絡がありました。特にダナンはIT環境が進んでいる都市でもあるので、ある公立校で3ヶ月ほど導入したところ、ハノイ同様に好評を得ました。
また、南部のビンズオン省ではスマートシティ化に向けて弊社とパートナー企業で光ファイバー及びWiFiインフラの整備プロジェクトを開始していますが、そこで「スマート教育」として提案したところ、2019年8月から12月まで2校の小学校でトライアル授業が実施されることになりました。これによって北中南部の3都市における感想や意見をまとめることができるので、それを反映し、本格的に普及させたいと思っています。
――今後の目標を教えてください
近藤 現在、「スマートエデュ」に対抗できる競合アプリケーションがない今がチャンスだと思っています。しばらくしたら競合サービスがでてくると予想していますが、競合が登場するまでに何とか「スマートエデュ」を完成形までもっていきたいですね。例えば、理科ならビデオのラインナップ数を、算数なら図形のシミュレーションを充実させるなど、コンテンツをもっと用意して、科目も地理やベトナム語(国語)を設けたいと思っています。
教育以外の分野では、QRコード決済の普及も目指しています。これも日本で普及し始めているビジネスです。これ以外にも日本で成功していて、ベトナムではまだなものはたくさんあると思うので、いかにそこに注目してベトナムでビジネス化できるかを見極めていきたいです。そういう面ではベトナムには可能性が広がっているので、今後どう盛り上がっていくかが楽しみですね。
日本電信電話(NTT)がベトナム郵電公社(VNPT)と電気通信事業を実施するため、1996年12月にNTTベトナムを設立。事業契約満了後はNTT東日本の100%子会社となり、光通信インフラなどの投資事業、クラウドゲームや教育分野などにおける各種付加価値サービス事業などを展開。
SHUNICHI KONDO
1962年生まれ。1987年大学卒業後に日本電信電話(NTT)に入社。2009年から2017年まではNTTベトナムへ出向。同年7月より同社の直接雇用となり、取締役兼ハノイ駐在員事務所所長を務める。グループ会社オーシージー(OCG)テクノロジー社の取締役も兼任。
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