オムロン血圧計をベトナムで生産
需給を満たし、無駄なく作る

オムロンの血圧計生産を担う「オムロンヘルスケアマニュファクチュアリングベトナム」。2007年にベトナム・ビンズオン省にて工場を稼働開始してから約10年が経った。これからのオムロンヘルスケアベトナムが目指すところとは。

10年をかけて主力工場に月70万台の血圧計を生産

――ベトナム進出に至った経緯を教えてください

北林 オムロンヘルスケアの生産は、2002年から中国の大連のみとなったのですが、2002年末から2003年半ばにかけてのサーズ(SARS)問題や2005年の大連地区での大規模なストライキなどがありました。生産拠点が1つのみというのはリスクが大変高いと危惧され、生産拠点を2つにするべきだと、2006年頃から視察団がアジア各国を回り始めました。

ベトナムは、労働人口、特に若者の人口が多いこと、GDPも毎年6%上昇と安定していること、賃金がそれほど高くないことなど、当時のジェトロ(日本貿易振興機構)も勧める国でした。そうして、家庭用血圧計生産の新拠点として、2007年12月に操業を開始しました。当初は第1工場のみでしたが、2012年4月には第2工場も稼働を開始し、現在は食堂やコミュニティスペースがある棟を含め、全部で3棟建っています。

――どのような製品を生産していますか

北林 ベトナムでは、90~95%は血圧計の生産で、アジア・ヨーロッパ・アメリカ向けの約30種類の血圧計を月70万台、生産しています。ほかに、僅かですがネブライザーというぜん息の治療薬を吸入する際に使う器具を作っています。

オムロンの主力製品、家庭用血圧計

大連工場から生産を移す際、事業成長に合わせてプラスアルファの部分をベトナムで担おうというスタンスでした。少しずつベトナム工場での血圧計の生産が増加していき、約10年かけて現在は大連と半々の生産量になりました。

健康意識の高いベトナムで末永く成長していく

――ベトナムでの血圧計の需要は

北林 ベトナム生産の製品は、アジア・南米を含むアメリカ・アフリカを含むヨーロッパに輸出していますが、そのうちアジアのシェアは30%で、ベトナムでの売上はインドに続き第2位です。その後に、タイ、マレーシアが続きます。ベトナムは平均年齢の低い若者人口の多い国ですが、健康に対して意識が高いと考えています。

――ネブライザーの需要はどうですか

北林 有難いことに、オムロンはずっと血圧計において世界トップシェアを誇っているのですが、オムロンが血圧計を販売した35年前は日本にも「家庭で血圧を測る」という習慣なんてない時代で、全く売れなかったんです。そこで大学等と協力しながら、「血圧とは何か」ということを自分たちも一から勉強し、市場に伝えていった。そうして、「家庭で血圧を測る」という習慣を作りました。土壌がなかったところを開拓したんです。

ネブライザーも同様だと考えていて、ベトナムを含む東南アジアでは、大気汚染も深刻で空気が悪い。本来、ぜん息など呼吸器系の病気も多いはずなのですが、そもそもそういった病気の認知度が低いのだと考えています。そういった意識を高めるという意味も含めて、市場そのものを作り上げることができれば、ベトナムでも末永く事業成長できるのではないかと思っています。

――ベトナムならではの取り組みを教えてください

ビンズオン省にあるオムロンヘルスケアマニュファクチュアリングの工場

北林 現在、ベトナム工場には日本人が8人駐在していますが、生産部門に所属しているのは3人で、5人は開発部を立ち上げるためのメンバーとして働いています。

製品開発は、大まかに例えると研究、開発、設計という3段階に分かれ、設計段階をベトナムに移しました。実際に図面を作り、サンプルを作成していくのが設計ですが、多くのサプライヤーがいる工場でサンプルを作ったほうが圧倒的にスピードが速い。また、生産現場とも近いので、現場との意見交換もしやすくメリットが多いんです。

――今後の計画は

北林 弊社の生産スタイルは「無駄なものは作らない」です。需要と供給をマッチさせ、必要とされるところに必要なときにきちんと届ける。ですので、営業や小売店と連携し、どういった状況で売れているのかを把握し、そのデータに合わせて生産する。消費者のみなさんはオムロンの血圧計がいつでも買える、小売店は無くなれば工場からすぐに送ってくれるから安心、というウィンウィンな連携をとっていきたいと考えています。

ベトナムはまだまだ成長過程にある伸び代の大きいマーケットです。生産規模は市場に合わせていきたいと考えていますが、来年は20%、その次の年も20%伸びるだろうと予測しています。

COMPANY INFO
オムロンヘルスケア株式会社の家庭用血圧計生産の新拠点として2007年に設立。同年12月から稼働し、2012年4月には第2工場が操業を開始した。アジア・アメリカ・ヨーロッパ向け血圧計製品の生産を担っている。
社長 北林篤
ATSUSHI KITABAYASHI
工学部を卒業後、1990年に地元三重県にあるオムロン子会社の松阪株式会社に入社。生産技術を学ぶ。中国・大連工場の立ち上げにも携わり、2003年から約10年間、中国・大連にて勤務。2015年4月より現職。