写真・文/杉田憲昭(GRAFICA)

グループの技術力や開発力を通じて
ベトナムのウェルネスに貢献

2021年6月、M&Aにより森永乳業株式会社が株式の100%を取得し、森永グループの一員となった「エロヴィベトナム」。ベトナム北・中部を中心に飲料やヨーグルトの製造・販売を手がける同社社長の千早隆司氏に、今後の展望を聞いた。

飲料・ヨーグルト分野で
日本国外製造と販売に挑戦

――御社の進出の経緯と沿革を教えてください。

千早 森永乳業株式会社はこれまでベトナム市場向けに育児用ミルクを輸出、現地代理店を通じて販売を行ってきました。しかし、将来的な他の分野での事業展開や、森永乳業の考え方ややりたいことを実現する上でも、自社で現地生産や販売ができる方が良い。そこで、エロヴィベトナムの株式を2021年1月に51%、6月に100%取得し、完全子会社化することで、短期間での進出を実現しました。
 
もともとエロヴィベトナムは、ベトナムの地で賞味期間の長い飲料やヨーグルトなどを既に作っていた会社でした。原料の調達から製造・販売のノウハウも持っており、森永乳業が培ってきた事業をこの国で展開する上で、経験や技術力、設備を活かせると考えました。
 
日本国外の子会社で飲料・ヨーグルト分野の自社生産・販売を一貫して行うのは、森永グループでも初の試みとなります。ベトナムは日本から距離が近く、人口や市場規模、成長性や親和性を考慮しても大いに可能性がある国。我々が持つ技術力や開発力を活用し、良い商品をご提供することで、当社自身の成長だけでなく、ベトナム市場へも貢献したいと考えています。

――強みや注力している商品、推進中の事業を教えてください。

4人の日本人とともに、多くのベトナム人スタッフが、美味しさと健康を日々届けている

 
千早 森永乳業としては、かねてからベトナムへ育児用ミルクの輸出を行ってきました。しかし2021年からは流動食や健康食品、サプリメント、大人向けミルクの取り扱いも開始しています。対して飲料やヨーグルト分野では今後、エロヴィベトナムがベトナム国内での製造・販売を行っていく予定です。
 
現在の主力商品は、子ども向け乳飲料の「ジンジン/zinzin」、4個パックのヨーグルト「エロヴィ/ELOVI」が好評です。なかでも「ジンジン」は長年続く人気商品です。
 
そうした中、コロナ禍の影響から、近年はヨーグルトの売り上げが伸びています。市場自体の伸びに加え、ベトナムの人々は健康志向が非常に強い。健康に良いというヨーグルトのイメージが、後押ししていると思っています。
 
また、ベトナムだからといって、味覚自体に大きな違いがあるわけではありません。たとえばヨーグルトでは、日本と同様にプレーンが最も人気で、他社の商品含め、私が食べて美味しいと感じるものが多くあります。もちろん嗜好や食生活など異なる部分はありますので、入念に調査・確認をした上で、今後の商品開発をしていきたいと思っています。

ターイグエン省にある本社工場(事務棟)

付加価値ある商品で
信頼ブランドの構築へ

――ベトナム市場の特徴や販売戦略を教えてください。

千早 当社の商品は南部ではまだ大規模な販売を行っていないため、主に北部や中部を中心にご愛顧いただいています。ベトナムの販売チャネルは個人商店などのゼネラルトレードが圧倒的に強いため、身近な商品としてお客様から一定の支持を頂いていると思っています。
 
一方、近年はモダントレードであるスーパーマーケットなどの伸び率も存在感を増しています。そのため、今後はゼネラルとモダン双方での展開が重要になります。

ストロベリーやマンゴーなどのフレーバーが揃うヨーグルト「エロヴィ」

 
Eコマースなどオンラインでの販売もカギといえます。量的にまだ大きくはありませんが、こちらも伸び率が高く、将来的に成長する分野です。そこで、モダントレードやデジタル、南部などの新規エリアを含め、全てのチャネルでプロモーションやコミュニケーションを取っていく予定です。
 
さらに、商品もお子様向けに限らず、大人や高齢者など、幅広い年代のニーズに応えられる商品をご提供していくつもりです。ベトナムの同業界には非常に強大な企業もありますが、ベトナムでは日本製品に対する信頼度が高い。そこで、ミルクで培ってきた森永ブランドを併せた信頼のブランドイメージを築き、かつ、技術力を活かした付加価値ある商品をご提供することで、一定のポジションを構築できればと思っています。

――今後の展望を教えてください。
 

ミルクとフルーツジュースを合わせた乳飲料「ジンジン」はロングセラー商品

千早 脱脂粉乳などの乳原料はベトナム国外からの輸入が中心で、コロナ禍による原料コストの高騰など、現時点では厳しい部分もあります。しかし、ベトナムの市場では当社の飲料やヨーグルト、森永ブランドの育児用ミルクを含め、全体で5年後に100億円の売り上げが目標。「エロヴィ」ブランドだけでなく、将来的には森永ブランドの商品の販売も視野に入れています。
 
なにより当社が掲げるスローガン「フォー・ベター・ウェルネス」は、健康で生き生きとした生活や人生への貢献を表現したもの。森永グループが誇る技術力や素材を活かして、栄養や美味しさをご提供し、多くのお客様に手に取っていただけるようにしていきたい。ひいては、ベトナムに住む全ての人々のウェルネスに貢献できればと思っています。

 

COMPANY INFO
2002年設立。ターイグエン(Thai Nguyen)省に本社と工場を構え、飲料・ヨーグルトの製造・販売を行う。代表する商品は乳飲料「ジンジン」やヨーグルト「エロヴィ」など。森永乳業のM&Aにより、2021年6月に、同グループの完全子会社となった。
General Director 社長 千早 隆司
CHIHAYA TAKASHI
1967年生まれ。1991年に森永乳業株式会社に入社。生産部門にて製品需給管理や業務用商品の販売・営業業務に携わる。エロヴィベトナムのグループ化に伴い2021年2月に渡越。同6月より現職に就任。