確かな「企画力」を軸に
動画制作×PR事業に特化

日本国内で売上・利益ともに最大規模を誇る総合PR会社「ベクトル」のグループ会社「ベクトルベトナム」。日本で培ったノウハウを現地の文化や商習慣と融合させたPR事業を展開している。現在の事業内容や今後の展望を聞いた。

現地のメディア事情に合わせ
新しいアプローチ方法を創案

――現在の事業内容を教えてください

相馬 主に在越日系企業のPR活動、いわゆる広告・宣伝活動のサポートをしています。

一方で、PR会社は実際にどういったことをしているのだろう? と思う方も多いと思います。PRとは「パブリックリレーション」の略で、企業を軸に企業が周りの株主や顧客といったステークホルダーと会話をするために、どういった方法が良いのか、情報提供をどのようにしていくかを考えて、実践していくことです。

弊社は日本国内では企業の広報部とお仕事をさせていただくことが多く、新聞やテレビなどのメディアでの露出を獲得して、広報部の対外的な活動のお手伝いしています。

2014年にベトナムに進出した直後は、企業とメディアの間に入る従来型のPR事業を中心に展開してました。しかし、日本国内よりもPRに予算を割いている企業が少ないことや、ベトナムは日本と比較してメディアの自由度が低いということもあり、現在は従来型のプロジェクトの数はあまり多くありません。

「セコムベトナム」から受注した事業PR動画の制作画面

その代わりに、情報をより効率的に伝達する方法や、ビジネスモデルを新たに構築していかなければいけないという中で、2018年8月から本格的に動画を活用したPR事業を展開しています。

――動画に特化したPR事業の特徴は

相馬 企業の事業内容を紹介するだけの動画を制作するのでは意味がありません。PR会社である弊社の強みは、お客様のアピールポイントや特徴を引き出し、それを生かす「企画力」にあると思います。

1〜2分ほどの1本の動画にあれもこれもと要素を盛り込むのではなく、何を1番伝えるべきか、軸がブレないことが何よりも重要なのです。そのため、企画・撮影・編集ができる日本人スタッフを揃え、ワンストップで制作ができる体制を整えています。動画1本あたり、打ち合わせから最短1週間で納品が可能です。動画の撮影や編集が一昔前より身近になっているからこそ、プロフェッショナルなものが求められていると感じています。

納品した動画の完成度の高さに満足してもらうことはもちろん、それをいかに拡散させるかという点にも注力しています。例えば、必ず〇回は再生させますという「再生回数保証」を設けているほか、ベトナム語字幕付きの動画を、弊社が運営するフェイスブックページで配信しています。また、企業の記者発表会などのイベントの企画・運営を弊社が担当する場合は、事業内容の紹介に加え、イベントの様子を盛り込んだPR動画を制作しています。

企業の宣伝・営業ツールとなる
動画制作サービスを提供

――周辺国の支社と比較して、ベトナムの特徴は何でしょうか

「ちよだ鮨」の2周年イベントの企画・運営を担当。動画作成・配信も行った

相馬 弊社の海外支社において、ここまで動画に振り切ってやっているのはベトナムだけですね。これからは、いかにローカライズするか、というところに特化していきたいと考えています。PR動画の制作にあたり、日本人スタッフが丁寧にヒアリングするという安心感は弊社の強みですが、一方で感度の高いベトナム人若手スタッフの意見を積極的に取り入れて、「ベトナムの今っぽい」エッセンスを必ず入れるようにしています。

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が広く浸透しているベトナムと動画事業は親和性が高く、手応えを感じています。日本よりも老若男女がスマートフォンで動画を気軽に活用していて、各々が面白いと思った動画をフェイスブックでシェアしていくなど、動画に対して抵抗感がなく、拡散力があると生活の中でも日々実感しています。

――今後の計画や展望は

前職の人材会社で営業人材の採用や育成の難しさを感じ、動画は効果的な営業ツールになり得るのではと思ったのが、この動画事業を始めたきっかけの1つでした。今後は製造業などBtoBの企業へアプローチをし、日系企業のものづくりのクオリティの高さを動画で残して、営業活動に利用してもらえたらと思っています。

さらに現在、ターゲティングをより精密にし、例えば「20代・日本食好き・月収〇〇USD以上」など細かくセグメント分けをして、ピンポイントに広告を打てる独自の配信ネットワークシステムの強化に向けて動いているところです。

日本人はある意味寡黙で控えめな「武士らしい」部分があると思うので、良いところや他にない素晴らしい部分を引き出して動画に落とし込むなど、日系企業がベトナムでPRできる環境を泥臭く、地道に整えていきたいです。

COMPANY INFO
2014年5月に総合PR会社「株式会社ベクトル」のグループ会社としてホーチミン市に設立。ベトナムの他に北京、上海、香港、台湾、シンガポール、タイ、インドネシアに海外拠点を持ち、各国で各種PR・セールスプロモーションなどの戦略プランを提供している。
ダイレクター 相馬 剛
TSUYOSHI SOMA
1988年生まれ。大学卒業後、株式会社リクルートジョブズに入社。求人広告事業や新規拠点の立ち上げ、大手法人営業、オウンドメディアの集客改善提案など、幅広い業務に携わる。2016年2月に渡越し、2018年8月より現職。