ITやIoTを駆使してお客様のビジネスに貢献

日系企業向けのITソリューションサービスを提供するKDDIベトナム。今年は工業団地内でのIoT(Internet of things)を活用した電力メーターの実証試験にも成功した。同社のこれまでの歩みや今後の事業などについて、代表の大石聡氏に話を伺った。

安定したサービスで信頼確保現地企業との提携事業も好調

――KDDIの前身であるKDDが1996年に駐在員事務所を設置してから20年以上が経ちました

大石 長年運営できているのはお客様やパートナー企業様の温かいご支援があってのことです。また、弊社に10~20年と長く勤めるベトナム人社員の多くが現在、マネジャーとして活躍していることも大きく貢献しています。近年は様々なお客様といくつものプロジェクトで協力関係を築けていることもあり、従業員数は6~7年前までは40人ほどでしたが、ここ数年で300人近くまで増えました。社員は日本の品質やサービスに誇りを持って働いてくれていますし、新しいことに挑戦する機会も増えてモチベーションが高まっています。弊社はお客様に育てていただき、共に成長してきたと言えますね。

――ベトナムならではの取り組みを教えてください

大石 KDDIグループがグローバルで提供するデータ通信サービスを運用、保守する「グローバルネットワークオペレーションセンター」を2014年にホーチミン市に開設しました。約170人で24時間365日、全世界を網羅しています。英語対応の運用センターならインドやフィリピンが主流ですが、ホーチミン市は英語力が高い人材が揃っており、人件費も安いところが開設の決め手となりました。最近はクラウドや仮想サーバなどの高度な運用業務を新しく受けるなど運営は順調です。
2010年7月には、FPTグループとの合弁会社であるテレハウスベトナムというデータセンターを提供する会社を設立しました。お客様の大事なサーバやIT機器をお預かりし、24時間365日体制で運用保守サービスを提供しています。このような新しい事業もベトナムの特徴です。

――携帯アプリ「Mobifone NEXT」も好評ですね

「Mobifone NEXT」の画面。QRコードでチャージができ、利用履歴や残高数もすぐわかる。英語選択、クレジットカード登録も可能く

大石 ベトナム第2位のキャリアであるモビフォン社と協力し、2016年12月にプリペイド携帯のトップアップチャージがQRコードで簡単にできるアプリをリリースしました。日本ではプリペイド携帯をあまり見かけないので手間自体が想像しにくいのですが、専用カードを購入しスクラッチして番号を入力、というこれまでの流れは確かに面倒でした。実はこのQRコードのアイデアは弊社のベトナム人社員から出たものです。手間が省けると好評で、運用が始まった後も殆どバグは出ず安定したサービスを提供できており、おかげさまでユーザー数は100万に達成しようとしており、月間継続利用率も71%を超えています。モビフォン提供アプリとして利用者数ナンバー1になれたのは、日越の力を合わせた結果でしょう。

日本の高い技術力とノウハウ、現地ニーズとの融合が重要

――工業団地内でのIoTを活用した電力メーターの実験に成功しました

大石 今回の実験はDEEP C工業団地からお話をいただき進めた事業でした。電力メーターをデバイスに繋げて約4km離れたゲートウェイまでデータ通信を行うものです。LPWA(LoRa)という新しい技術を使ったため、デバイスを調達したり、ベトナム仕様の電力メーターと接続するのが難しかったりと、大変な部分も多かったです。日本なら1~2週間でできることが3ヶ月くらいかかったこともありました。電力メーターの可視化は同工業団地が長年目指していたことだったので、実験の成功までに約1年を要しましたが、今回の成功はとても喜んでくれました。

2018年5月、DEEP C工業団地とIoTを活用したサービス導入に関する覚書(MOU)を交わした

現在は実用に向けて準備中で、年内には正式に運用が始まる予定です。コストや人件費を抑えられるので、導入したいという声があれば各工業団地にどんどん取り入れていきたいです。

――ベトナムでの通信事業にはどのような課題が残っているのでしょう

大石 ベトナムではインターネットの速度が遅かったり、障害が多かったりと未だにサービス品質が安定していない部分があります。特に国外へのインターネット速度が制限されるとクラウドの活用という点では課題となってしまいます。

携帯電話に関してもベトナムは日本と同じくスマートフォンが人気の一方、日本とは異なりプリペイド携帯が主流で固定電話はあまり使われません。SNSなどが発展しており、今後は音声サービスの需要は減少する傾向にあるので、この数年で通信会社の事業モデルは大きく変わっていくと思います。その変化に対応していく準備を整え、新しいビジネスモデルを開発する必要があると考えています。

――今後の目標を教えてください

大石 IoTは工場だけでなく、物流、医療、農業、教育、セキュリティなど様々な場面で活用ができる技術ですが、安定したサービスを提供できないと顧客離れが進んでしまいます。もちろん弊社だけではサービスの安定性を確保することはできませんので、現地企業、日系企業との協力体制をしっかりと築き、IoTの活用を拡げていくことでベトナムの発展にも貢献ができればと思っています。

また、RPA事業(ロボットによる業務自動化)も進めています。単純作業を自動化してミスを減らす。単純に人数を減らすのではなく、お客様が付加価値の高い業務に集中していただくことが可能となります。今後もITやIoTを駆使して、少しでもお客様のビジネスに貢献ができるようなソリューションを提供していきたいです。

COMPANY INFO
1996年、KDD社がハノイに駐在員事務所を開設。2000年にKDDベトナム社を設立後、日本でDDIおよびKDD、IDOが合併しKDDIが誕生したことに伴い、2001年に社名をKDDIベトナムに変更。オフィスのIT環境やネットワーク、クラウド環境の構築など、あらゆるITソリューションサービスを総合的に提供している。
KDDI ベトナム 代表取締役社長 大石 聡
SATOSHI OISHI
1972年生まれ。1996 年に第二電電株式会社に入社。日本国内の法人営業を経て、2002年にドイツへ赴任し営業及び企画を務めた。2008年から東京本社でグローバル部門の企画・営業推進を担当。2012年にはシンガポールで営業責任者として勤務。2015年よりベトナム勤務となり、現地代表を務める。