【ベトナム経営】Vol. 12
Thang Long Industrial Park Corporation
第三タンロン工業団地
20年以上培った信頼と実績
日本と変わらない操業環境を
住友商事がヴィンフック省で建設を進めている第三タンロン工業団地の第1期が、2018年11月に操業を開始した。第一にあたるタンロン工業団地の開業から20年超。これまでの歩みや今後の展望などについて、和智聡氏に聞いた。
物流支援から製造支援へ
日系製造業の約半数が入居
――タンロン工業団地は1997年に開業しました
和智 弊社の工業団地事業のルーツはタイにあります。当初は、日本の製品をタイで梱包して輸送するなどの物流支援が中心でしたが、今後はものづくり全般の支援もしていきたいと考え、インドネシアやフィリピンなどに工業団地を建設していきました。
ベトナムは1997年、タンロン工業団地をハノイ市内に建設しました。ありがたいことに早々に完売し、第二をフンイエン省に建設。それがまた完売したことで、第三を建設するに至りました。
――工業団地の建設にあたり、ハノイを選んだ理由は何ですか
和智 当時の日系企業のベトナム進出は圧倒的に南部優勢だったのですが、ハノイは首都だから、という側面が一番強いですね。工業団地は、第一タンロンなら274ha、第二は346ha、第三は213haと、土地の規模もかなりのものです。各種認可を得たり、周辺のインフラを整える際は、必ず地元の政府機関の協力が必要になってきます。中央政府が置かれているハノイであれば、そういった点をスムーズに進められるという判断がありました。
第二、第三を建設する際も、ベトナム各地で数多の候補が挙がりましたが、第一と第二を建設した時の経験が生かせることもあり、やはりハノイ近郊を選びました。
ベトナム北部には日本商工会議所の製造部会への登録ベースで約330社の日系製造業が進出しています。すべてが商工会議所に登録されている訳ではありませんが、約半数にあたる約155社がタンロン工業団地に入居してくださっています。中央政府に皆様の意見や要望をまとめて持っていきやすいので、結果的にハノイであるメリットは大きかったと感じています。
――タンロン工業団地の特徴を教えてください
和智 各入居企業様には日本と同じような環境で「ものづくり」に集中してほしいという思いから、日本仕様の最上級のインフラを整えています。上下水処理場を完備し質・量ともに安定した水を提供できますし、自家変電所も設置しているので他とは比較にならないくらい電気も安定しています。また、複数系統から受電していますので、電気系統に問題が発生しても迅速に対応できます。
あとは各入居企業様が日本語で気軽に相談できるだけでなく、弊社からきめ細かいサポートを行えるように、各工業団地に日本人スタッフを配置しています。第一は2人、第二は3人、第三は現在1人ですが、今後採用活動を行い、増員する予定です。
駅伝などのイベントも各工業団地で実施しています。第二では3年前から夏祭りを開催しており、屋台を出店したり、盆踊りを楽しんだりと、日本の夏祭りのような雰囲気ですね。ベトナム人従業員はそういった日本の文化に触れる機会は少ないと思いますし、町内会のように各社の交流が図れる良い機会にもなっています。
コストを抑え良いものを安く
数年以内に第四建設を目指す
――第三タンロン工業団地の建設にあたり、意識した部分は何ですか
和智 建設にかかるコストは強く意識しましたね。例えば、第一、第二を建設する際は、道路の道幅を広くして、電線を地下に埋めるなど最上級のインフラを供給することに腐心しました。その分、費用がかさんでしまったので、今回は電線を地上に出し、道路脇のインフラゾーンの幅を少し狭くしました。それにより、電線にかかるコストなどを大幅に抑えることができました。ただし、道路沿いの植栽を日本芝にしたりすることで、景観が損なわれた印象を与えない工夫を施しました。
これ以外にも工法の見直しや給水管などのサイズを変更することで土地の販売面積が広くなり、より多くの企業様が入居できるようになりました。
――今後の目標を教えてください
和智 2019年3月現在、第三タンロン工業団地は操業を開始したばかりなのに、工業用ブラシ製造の槌屋ティスコさん、工業用カッターの兼房さん、樹脂成形の大和合成さんなど、すでに10社超が入居を決めてくださいました。これも第一や第二に入居してくださった各企業様が、弊社のブランド力を高めてくださったおかげだと心から感謝しています。
現在も土地を絶賛販売中ですし、2019年に入って第二期区画の開発にも着工したので、より多くの企業様が入居を決めてくださるよう、また今年からご入居企業の操業が順次始まるのでそのサポートに尽力したいと思います。
そして、近年日系企業の進出が著しいベトナムにおいて、今後は第四タンロン工業団地の開業準備に向けて、少しずつ動いていきたいです。
1997年2月、住友商事がハノイ市内にタンロン工業団地を設立。2006年11月にフンイエン省で第二タンロン工業団地、2018年11月にヴィンフック省で第三タンロン工業団地の操業を開始した。近隣の地域では、採用説明会や交通安全講習会を開くなど、地域貢献活動も行う。
SATORU WACHI
1978年生まれ。滋賀県大津市出身。2001年に住友商事に入社し、東京の物流部に配属となる。その後、住商グローバルロジスティクス社などを経て2014年より海外工業団地部に所属。第三タンロン工業団地の操業開始の準備に伴い来越、2017年9月より現職。
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