日本の高品質な美容医療を
低価格でベトナムに広めていく

2000年に神奈川県藤沢市で開院して以降、日本全国でクリニックを展開している湘南美容クリニック。当時、同院唯一の海外拠点として2014年にホーチミン市に開院した。日本人スタッフが常駐し、日本品質の美容医療を提供している。

経済成長、トレンドに合わせ“美”のニーズに応えていく

――ベトナムにクリニックを開院した経緯を教えてください

相川 日本人医師が現地で日本の技術を提供するという目的があったので、ベトナムでは日本の医師免許が使えることが大きな決め手となりました。

実は、同じく日本の医師免許が使える中国でクリニックをオープンしたものの、うまくいかなかったんです。中国での経験を生かし、もう1度海外に挑戦しようとなったときに、平均年齢が低く、比較的親日であること、そして経済的成長が著しいということで、ベトナムでの開院を決めました。

ただ、日本とベトナムでは法律やルールが違うのと、申請する書類の量がベトナムは日本の約5倍必要になるなど、計画から開院まで約2年かかってしまいました。

ようやく、2017年に当初予定していたすべての施術メニューを提供できるようになりました。

――ベトナムにおける、日系の美容クリニックの強みはなんですか?

相川 日本の高品質な美容医療を提供していることですね。

途上国では安全性を重視せずに極端な整形手術を受けてしまう傾向があり、経済が成熟していくにつれて、安全で自然な治療を希望する人が増えるということが分かっています。いずれ、ベトナムでも経済の発展に合わせてこういった市場の変化が起きると考えられます。

実際に、日本の技術力や安全性の高さを信用して、中国から遥々日本のクリニックに足を運んでくださる方が増えています。今後はベトナム周辺のアジア各国へも展開を考えていますが、ライバルは韓国の美容整形クリニックですね。アジアにおいて韓国の美容はとても強い影響力を持っていると感じています。しかし、弊社の指針である「高品質な医療技術を低価格で提供する」を徹底していくことで、受け入れられていくと思っています。

ベトナム院の受付。白とピンクを基調にした明るい雰囲気だ

――ベトナムでも「低価格」は実現できるのでしょうか

相川 例えば、しわ治療などに使う「ボトックス」注射は、弊社グループが世界で一番使用していると言われます。仕入れの量に応じて価格を抑えられるのです。価格競争力に関しては、日本全国でクリニックを展開しているという点が強いと思います。

さらに、ベトナム人医師、看護師は日本での研修制度を充実させることで、人件費を抑えながら「ジャパンクオリティ」を維持しています。

また、手術料金はベトナムの相場に合わせているので、中には日本よりも安く受けられる施術もあり、在越日本人の来院数は年々伸びています。日本に住んでいる方に向けて旅行会社と協力してプランを作ったり、モニターの募集も行っています。

SNSの普及が美意識に影響20~30代の来院者が中心に

「整形シンデレラオーディション」は整形手術をきっかけに、内面から美しく、女性の夢を応援するプロジェクトだ

――日本とベトナムの違いはどういった点に感じますか

相川 ベトナムは大きな変化を求めて来院される方が多いですね。美容整形の希望箇所では鼻が人気です。

弊社が毎年日本で開催している「整形シンデレラオーディション」で、3回目の開催となる2018年はベトナム人の女性が初めてグランプリに輝きました。やはり、彼女も「大きく変える」ことに注力し、顔だけで何十種類もの施術を受けました。

来院する方の年齢は20~30代が主な層で、これは日本でも同様のことが言えます。今、若い人の間で自分で撮影した自分の顔をSNSに投稿することが流行していますよね。スマートフォンの普及により、写真を撮ることが昔に比べてぐっと身近なものになりました。長年美容業界にいますが、若い女性の自分の顔に対する興味関心、きれいになりたいという気持ちがどんどん強くなっていると感じます。

――今後の計画を教えてください

相川 これまでは広告の規制もあり、あまりベトナム人向けの宣伝活動に力を入れられなかったので、認知度向上に向けて積極的に取り組んでいきたいですね。

また、1ヶ月に1度ベトナムを訪れて、ベトナムのニーズはどこにあるのかを探っています。来るたびに街の変化や、トレンドの移り変わりの速さを感じています。

ベトナムのあとにロサンゼルスにクリニックを開業し、アメリカの最先端医療の情報がいち早く入ってくるようになりました。ベトナムは美容医療に関する規制の厳しさや法律の壁もありますが、柔軟に取り入れていきたいです。

日本のクリニックでは内科、眼科、審美歯科、不妊治療などにも取り組んでおり、ゆくゆくは美容整形以外の分野もベトナムで展開できたらと考えています。

COMPANY INFO
2000年に神奈川県藤沢市で開院。その後着実に分院数を増やし、現在は北海道から沖縄まで、2018年8月時点で全国72拠点77院を展開する日本有数の美容クリニックに成長した。年間来院者数は120万人を突破。リピーター率は90%以上を誇る。
SBCメディカルグループ代表 相川 佳之 医師
YOSHIYUKI AIKAWA
1970年生まれ。1997年日本大学医学部を卒業し、癌研究所附属病院麻酔科に勤務。1998年より大手美容外科に勤務した後、2000年に独立。神奈川県藤沢で湘南美容外科クリニックを開業。自らも施術例となり、積極的に公開している。著作に『情熱経営』(幻冬舎刊)など。