【ベトナム経営】vol. 37
エネクスフリートベトナム
Enexfleet Vietnam
ベトナムで新たな
カーケア文化を根付かせる
「伊藤忠エネクス」と「エネクスフリート」による合弁会社「エネクスフリートベトナム」は、2020年に洗車とカーコーティング専門店を開業した。ベトナムにおけるカーライフ事業への参画について、代表の小田康裕氏に戦略を聞いた。
まずは洗車とコーティング
技術を広く周知する
――ベトナム進出の経緯を教えてください
小田 「エネクスフリートベトナム」は、燃料の商社「伊藤忠エネクス」と、燃料、電力、介護、保険、車販売などの事業を行う連結子会社「エネクスフリート」の合弁会社です。かねてから「エネクスフリート」が「イオンモール」と繋がりがあったため、2020年12月に「イオンモール・ハイフォン・レチャン」のグランドオープンに合わせて出店の話が浮上したのがベトナム進出のきっかけでした。
当初は燃料販売などの事業展開を模索していましたが、すぐに開始できる事業として、まずは「エネクスフリート」が持つ洗車の知見を活かし、洗車とカーコーティング専門店「エネフリ・カー・ビューティー・ジャパンスタイル」を「イオンモール・ハイフォン・レチャン」に開業しました。
――店舗でのサービスについて教えてください
小田 1階がレセプションで、B1階が洗車場です。お客様と洗車前に車の状態を確認した後、洗車のコースを提案します。待合室にはモニターを設置しているので、大切な愛車がどのように洗車されているかが確認できます。
ベトナムの街中にある洗車場は水洗いが主流なのに対して、「エネフリ・カー・ビューティー・ジャパンスタイル」では、日本で普及している洗車溶剤ブランド「キーパー」のシャンプーやワックス、コーティング剤をベトナムで初めて輸入して使用しているため、美しい仕上がりに自信があります。
サービス後にはお客様にメンテナンスフォルダをお渡しし、どんな溶剤を使用したか、次回はどんなコースがおすすめかをお伝えしています。
店舗には「エネクスフリート」から出向している日本人店長と日本語が話せるベトナム人スタッフが常駐し、さまざまな要望に柔軟に対応しています。お客様がショッピングモールで買い物をしている間に車をメンテナンスできるという点も、ベトナムでは新しいサービスだと思います。
――ベトナムと日本では、どのようなカーケア文化の違いがありますか?
小田 大きく異なる点は、コーティングです。日本では新車の50%は塗装面を保護してツヤを与えるコーティングが施されます。一方、ベトナムの車はコーティングがほとんど施されていません。
ベトナムではコーティングの文化が根付いておらず、また車両保険制度の違いから、車のキズ隠しのために再塗装するケースが一般的です。当社がベトナムでコーティングサービスを普及させることで、車を美しく保ちながら大切に乗ることを提案したいと考えています。
目標はカーライフの
ワンストップサービス
――ベトナムのカーケア事情は、今後どう変化していくでしょうか?
小田 現在、ベトナムにはトラックやバスを含めて約300万台の車が車両登録されています。日本は、乗用車だけで約6千万台。つまり、ベトナムは日本の20分の1の数です。驚くことに、ベトナムでは毎年25万台の新車が売れています。ですから、今後さらに洗車やコーティングサービスの需要が高まることを期待しています。
街中にある洗車場の洗車料金は約500円です。弊社の店舗では、洗車が約1000円、コーティングが約1万円〜です。今はまだ一般的ではないコーティングですが、利用されたお客様の満足度は非常に高く、50%の方にリピートしていただいています。ベトナムは口コミの力が大きいので、1人ひとりのお客様に効果を実感していただくことで評判が広がっていくことが理想です。
――今後の課題を教えてください
小田 まずは実店舗での洗車・コーティングサービスの向上と定着を優先しつつ、今後はフランチャイズなども視野に入れています。
ベトナム国内の新車や中古車の販売を行うディーラーに、コーティング技術を広めるB to Bの営業も重点的に行う予定です。
ベトナム進出の本来の目的であるエネルギーの販売も模索しながら、業容拡大を目指しています。新電力事業への参入やガソリンの販売にとどまらないカー用品の販売、鈑金など、多様なサービスでベトナムにおける「カーライフのワンストップサービス」を推進していきたいと考えています。
石油販売を行う「エネクスフリート」と、伊藤忠商事系列のエネルギー総合商社「伊藤忠エネクス」の合弁会社として2020年に設立。現在は自動車アフターサービスを行う。日本人社員は2人、ベトナム人社員は10人。(2021年4月現在)
ODA YASUHIRO
1973年生まれ。1996年、伊藤忠燃料(現・伊藤忠エネクス)に入社。石油卸しの営業、東北タンク商会の代表取締役社長、エネクスオートの代表取締役社長を経て、2020年よりベトナムへ赴任。現職。
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