売り上げの増加は開発から
生産までの現地化が鍵に

ベトナムにおける目薬メーカーのパイオニアとしての成功に続き、ニキビケア、リップケア、日焼け止めなど数々のヒット商品を生み、各カテゴリーで高いシェアを獲得する「ロートメンソレータムベトナム」。人気商品を生み出す秘策を、代表の白松氏に聞いた。

どんな状況にも対応できる
組織力の向上を強化

――最近の売り上げの傾向を教えてください

白松  2019年は現地通貨ベースで前年比18%の増収でしたが、2020年3~4月、新型コロナウイルス(COVID-19)拡大の影響で社会隔離政策がとられた時期は、弊社の主要取引先であるショッピングモールや化粧品店が休業。その影響を受けて売り上げは前年割れしました。人々の外出が減り、マスク着用が義務付けられたので、リップケア商品や日焼け止めが一番大きな影響を受けました。一方で、目薬や洗顔料、薬用フケ防止シャンプーなどの売り上げが上昇。コロナ禍で、消費者の予防や衛生面への意識向上が影響したのではないかと思います。このように、売り上げの伸びた商品が落ち込んだ部分を補填して、今年度も増収増益を確保できそうです。

――コロナ禍でのマーケティングはどのように行われましたか?

白松  社会隔離期間中はスーパーやショッピングモールで行うイベントやサンプリングがすべて中止になったので、フェイスブック(Facebook)やユーチューブ(Youtube)での情報発信など、デジタルマーケティングを強化しました。ここ数年はショッピー(Shopee)やラザダ(Lazada)などECサイトでの販売に力を入れているため、すでにプラットフォームはできていましたが、専属のECチームが各社と密に打ち合わせを行い、季節のキャンペーンにも積極的に参加しました。その成果があってか、2020年1月~9月のECの売り上げは、前年比50%増でした。

――中でも売り上げが高いのはどの商品ですか?

「トーンアップUV」は微細なストロボパールが配合されており、メイクアップ効果も高い

白松 社会的隔離後からヒットを記録しているのが、紫外線をカットしながら色と光をコントロールして肌を明るく見せる日焼け止め「トーンアップUV/TONE UP UV」です。コロナ禍で需要が急減した日焼け止め市場ですが、この商品は5月にキャンペーンを開始して以来、すぐに新しいメイクアップ日焼け止めとして認知されました。「インスタ映えする」と若い女性の間で話題となり、売り上げは昨年の2・3倍に。一時品切れも発生しましたが、ベトナム製造なので、すぐに追加して供給できたのも勝因です。商品は日本製のものより容量を減らし、安価にすることで若者に手に取ってもらいやすい商品にしました。また、ベトナムの人気シンガー・Amee(エミー)のMVにスポンサーとして商品を登場させ、気分が晴れやかになるようなカラフルな広告を提案しました。この提案を社内では「ライトメッセージ」と呼んでいて、社会隔離明けの消費者の気分にマッチしたのだと思います。

ベトナムでも長く愛用して
もらえるブランドを目指す

――社内で共有している企業理念はありますか?

白松 弊社は「NEVER SAY NEVER」という標語をかかげ、常識の枠を超えてチャレンジすることを重要視しています。「肌ラボ」シリーズを例に挙げると、2000年初頭のベトナムではスキンクリームを使う文化はあっても化粧水を使用する習慣がありませんでした。そのような状況で「肌ラボ」化粧水を販売したので、当初は苦戦しました。おまけに「肌ラボ」という商品名はベトナム人が発音しにくいという声もあり…。それでも、成分のヒアルロン酸を改良し続け、地道にプロモーションを続けたことで徐々に支持を得て、2015~2016年くらいから認知度のあるブランドへと成長しました。このように、今後もベーシックなものを提案し続けながら、改良を重ね、よりよい商品を提案していきたいですね。

「肌ラボ」の新イメージキャラクターには、健康的なイメージを持つモデルのKōki,を起用した

創業から24年、「肌ラボ」をベトナムで販売開始してから10年以上経つので、当時10代だった消費者は大人になっています。そのような方には9月から販売を開始した50の潤い成分が入ったヘアケアシリーズ「50の恵」を手に取ってもらいたいです。これは年齢とともに深まる髪の悩みを解決する製品です。また、ベトナムのみで新たに開発した美白ライン「ディーナ/D‐na」は、新規の美白成分を配合してシミを根本から治すことに着目した商品です。ハノイとホーチミン市で展開する美容クリニック「ロートアオハルクリニック」の医師が開発に携わったのも新しい試みでした。

――今後の展望を教えてください

白松  少し先の話になりますが、2030年までのロートグループのビジョンは「Connect for Well‐being」です。これは、心と体の健康、楽しい生活を提供するために、社内と社外、あるいは、化粧品と医薬品というように、いろいろなことを結びつけようというものです。また、社員の声を拾いながら、今後も開発、生産、マーケティング、営業、すべてを自社で行う予定です。これは組織を活性化させ、組織自体の健康度をあげることだと考えています。

 

COMPANY INFO
大阪府に本社を置く「ロート製薬」は、1996年にベトナムに駐在員事務所を設立し、医療用ではない「疲れ目に点す目薬」を販売して話題に。1997年に「ロートメンソレータムベトナム」を設立。ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)に生産工場を構える。
General Director 代表 白松 浩文
SHIRAMATSU HIROFUMI
1964年生まれ。大学卒業後日用品メーカーに入社。マーケティング部や国際事業部を経て、台湾に4年、ベトナムに1年半駐在。日本帰国後、2006年にロート製薬に入社。2007年に来越して現職。