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ヶ月間安定した状態を維持してきた金融市場は11月に再び変動した。その根本的な要因は米大統領選挙にある。投票結果が発表されて以来、ドル指数は2%以上上昇した。ベトナムドンはドルペッグ制に近いので、他国の通貨と比べてドン高になり、輸出競争力が低下した。また、年末決算により、外貨買い需要が高まってくる。この2つの要因に加え、8月からの基準相場上昇の傾向は、公式市場と自由市場ともに対ベトナムドンのドルの価値上昇を引き起こした。

季節的な変動要因により、11月の金利は高騰した。銀行間の翌日物レートは10月より2.2%上昇し、2.85%となった。対顧客市場における1ヶ月定期預金の平均金利も5%から5.3%に上昇。

金利とドルの値上がりは海外投資家が新興市場から資金を引き揚げ、米国に回帰する傾向を強める。11月の最後の3週間で、米国を拠点とする株式上場投信(ETF)に400億ドルの資金が流入し、一方の新興市場のETFから72億ドルの資金が流出した。ベトナムも例外ではなく、米大統領選の後、2つのETFから2600万ドルと2400万ドルの資金が急速に引き揚げられた。

海外投資家の売り圧力により、11月のVNインデックスは-1.6%下落したが、新興国23ヵ国の株式で構成される新興国株式指数のMSCIエマージング・マーケット・インデックスの-4.7%下落と比べて、まだ低い水準だと見られる。本年初めからVNインデックスは14.9%、MSCIは8.6%上昇した。しかし、他の新興市場と比べて、ベトナムの上場企業の利益成長率はまだ低いため、VNインデックスのPER指数(株価収益率)は15.6倍に引き上げられ、MSCIエマージング・マーケット・インデックスの水準とほぼ同じとなっている。

グエン・ドゥック・フン・リン
Nguyen Duc Hung Linh
Saigon Securities Inc.の個人向け分析・投資コンサル部門マネジャー。シンガポールでMBA、ハノイで学士号を取得。シンガポールで市場分析家や法律専門家として勤務後、2011年より現職。
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