越の国の法律相談 No.031

ベトナム、特にハノイでは大気汚染が深刻化し、人々の健康に悪影響を与えています。世界各地の大気データを収集・分析している「エアビジュアル(Air Visual)」によれば、ハノイにおける大気汚染は世界でも最悪レベルであると報告しています。ベトナムにおける大気汚染の原因は、バイク及び近年急激に増加している車からの排ガス、練炭の使用などと考えられています。このため、政府は近年、①より厳しい排ガス基準の適用や、②ハノイ市内における練炭の使用禁止などの政策を実施しました。

ガス排出量を削減する国家プログラムを承認

環境保護法は、排ガス・塵埃(排ガスなど)を排出する交通手段・機械・設備・建設工事において、環境技術規格を満たす濾過装置・保護設備を用意し排ガスなどの削減手段を備えなければならないと規定しています。政府は、森林資源を保護することにより温室効果ガス排出量を削減する国家プログラムを承認し、また自動車については従前の規制を強化する決定を公表し、道路走行時及び中古車輸入時の自動車(ガソリン車・ディーゼル車)の排ガス規制を強化しました。ただし、これらを実現するための定期的な車検(バイクについては任意)や廃車などは十分に実行されているとはいえません。

練炭使用違反行為行政罰制度も

ハノイ市人民委員会は、2019年12月31日からハノイ市内で練炭の使用を禁止する指示を出しています。ただし、2020年12月31日まではハニカム炭の代わりの原料を探す期間とし、2021年1月1日から練炭の使用禁止違反行為について行政罰が科されます。
 
このように、政府は大気汚染を防ぐための政策を実施していますが、コロナの影響で制限された人々の往来が元に戻れば、ベトナムにおける大気汚染も再度問題化され、抜本的な解決が望まれます。

 

小林 亮 Kobayashi Ryo
日本国及びベトナム外国弁護士。東京オフィスで多数の東南アジア案件を担当後、2014年4月より現職。1年のアメリカ留学を経て、2019年9月に復帰。
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