越の国の法律相談 No.036

例年テトの時期のベトナムは海外からの帰国ラッシュとなりますが、今年はコロナ禍の影響で帰国できない人が多いと見られます。法令により帰国が制限されているのでしょうか。

帰国が難しい理由

世界のどの国でも、自国の国籍保持者に対して入国を禁止・制限することは、原則としてありません。これは普遍的な国際慣行であり、主権国家の存在意義そのものともいえます。ベトナムでも、法令に従って入国手続を行う限り、入国自体は法令上制限されていません。
 
しかし実際には、コロナ禍によりベトナムへの帰国希望者が増加している一方、首相決定に基づいて、世界各地からベトナム行きの国際線の定期便が一時停止されており、特別便の便数も抑制されています。現状では、各国所在のベトナム大使館が帰国希望者のうち、必要性の高い人(労働契約終了後収入がなく所在国の支援がない労働者、未成年の学生、卒業後ビザ延長が困難な留学生、妊婦・既往症のある高齢者など)から優先的に帰国便への搭乗を調整しています。

不正入国者には
罰金・処罰

このところのベトナムへの不正入国事例の中には、航空券が入手困難、または感染症予防管理法に基づく強制隔離処分を免れるために、正規の入国手続きを行わずに入国するケースも含まれています。入国手続違反(違法な国境通行、不法入国者の車両内隠匿・車両運送、これらの補助・仲介・実施など)や強制隔離処分の回避行為は行政罰金の対象となり、さらに、入国手続違反行為については、再犯・利得目的・職権乱用などの場合には刑事処罰(罰金または懲役)の可能性もあります。
 
なお、日本政府は技能実習生としての滞在期間が終了した後も、コロナ禍のため帰国が困難となっている外国人につき、「特定活動(6ヶ月・就労可)」への在留資格の変更を認めるなど、特例的な措置を講じています。

 

小幡 葉子 Obata Yoko
日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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