紆余曲折ある債権回収ビジネス事情

売掛金などの債権をどう取り立てるかは、ベトナムにおけるビジネス活動の中でも特に頭の痛い問題です。法令上は、裁判所の判決を得て、執行官が強制執行する制度がありますが、現実的に時間とコストをかけることは難しいでしょう。

ベトナムでは、かつて非公認の債権回収業者が跋扈し、債務者がいる建物の前で「○○さんは借金を返しません」と横断幕を掲げるなど、強引な取り立てを行い社会問題化した時期がありました。しかし、2007年の債権回収業に関する104号政令で債権回収業者の事業条件が明記されるとともに、債権回収業者登録制度が新設され、事業条件を満たせば、合法的に債権回収業を行えるようになりました。

金融機関には認められるファクタリング事業

しかし、その後も健全な業界育成は難しかったようで、2021年1月から施行された現行投資法によって、債権回収業は投資禁止分野(その他の禁止分野としては、麻薬売買、武器売買、指定化学品・鉱物売買、希少生物売買、人身・臓器売買、売春、無性生殖関連事業、爆竹など)の1つに指定され、104号政令も廃止されました。

ただし、銀行・ノンバンクなど、金融機関としての事業ライセンスを有する企業は、金融業としてのファクタリング(債権を買い取り回収する)事業が認められており、将来性のある事業分野として新規参入も行われています。

 

小幡 葉子 Obata Yoko

日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。

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