【ベトナム経営】Vol. 11
Becamex Tokyu
べカメックス東急
暮らしの多様性に合わせた
街づくりを推進し、未来を創造
2012年3月に「東急電鉄株式会社」と地場デベロッパー「べカメックスIDC」の合弁会社として設立された「べカメックス東急」。ビンズオン省で進める都市開発プロジェクトのこれまでの歩み、そして今後の展望を聞いた。
地元の人々と信頼関係を構築
ノウハウを蓄積した7年間
――会社設立までの経緯を教えてください
呉 東急電鉄は2000年前後に海外事業を一旦縮小しているのですが、もう1度海外への進出を検討する中でベトナムが候補に上がりました。2011年12月に具体的なプロジェクトがない段階で、私を含む駐在員2人で赴任したのが始まりです。
べカメックスIDCはビンズオン省の発展のために大学や病院を運営し、工業団地とそこまでの道路づくりも手がけています。東急電鉄もマーケットに先行して何かを仕掛ける際、東急線沿線に大学や遊園地などを作っており、共に 街づくり をするデベロッパーとして、親和性の高さを感じたのが決め手になりました。
――現在進行中のプロジェクトは
呉 我々の事業は 街づくり ですから、住宅・商業・交通等の複合です。まず、会社設立からわずか8ヶ月後という異例のスピードで2012年11月に「ソラガーデンズⅠ」に着工しました。その後、商業施設「ヒカリ」が完成し、来年には第2期拡張を控えています。
現在はマンション「ザ・ビュー」を販売している一方で、「ソラガーデンズⅡ」を三菱地所レジデンスさんと進めています。さらに2020年は「ザ・ビューⅡ」を建設予定です。今のところ、年間に600戸のマンションを供給する計画は順調に進んでいます。加えて、63haもの広大な敷地で進めている当社最大の住宅街「ミドリパーク」は、今後20年で約1万戸の開発を段階的に進めていきたいと考えています。
まもなく会社設立から8年目を迎えますが、助走を終えてようやくジャンプできる体制が整った段階です。毎年新しいプロジェクトを始められる体力がつき、ノウハウが溜まったと実感しています。また、ビンズオン省で暮らす人々が私たちの 地に足をつけて活動している 様子を見て、さらに我々が手がけるマンションや商業施設、バスを利用することで信頼が生まれたのだと思います。それにより、事業を進めやすい環境が整ってきたと感じています。
日本の施工基準を徹底し、
安全性・住み心地をアピール
――ベトナムならではの苦労や難航した点は
呉 当初、「ソラガーデンズⅠ」が売れず、売り切れるまで次へ進めないという停滞期がありました。理由は周囲の物件よりも価格が高く、それは我々の品質の高さ故ではあるものの、なぜ値段が高いのかがベトナムのお客様に伝わらないというジレンマがありました。
1回目の販売会を兼ねて会社設立1周年記念のパーティーを開いたにもかかわらず、1戸も売れず…。まさか、という感じでしたね。2015年の竣工時にも大規模なお披露目会を開きましたが大きな動きはありませんでした。
爆発的な動きが出たのは、外国人が住み始めてからです。ホーチミン市からビンズオンに通っていた日本人が引っ越してきてくださったり、韓国、台湾、中国の方が住み始め、現在では部屋の空きもない状況です。ベトナム人が購入して、外国人が借りるというサイクルが回り始めて販売数が急激に伸びました。2016年の法改正で外国人が物件を正式に買えるようになったことも追い風になりましたね。
メンテナンスのし易さや水回りの導線など、見えないところの施工基準は日系として徹底しています。ただ、間取りや商業施設のテナントなど、ベトナム人の嗜好を把握するために、日々早いスピードで変わるトレンドを追いかけていかなければいけないところに難しさを感じています。そのため、今は日本人が指示を出すというより、ベトナム人スタッフに先頭に立って考えてもらっています。
年に1〜2回、ベトナム人スタッフに日本で東急沿線の開発を見てもらい、開発後のイメージを共有する機会を作っています。街づくり というのは地域性が強く、必ずローカライズしなければなりません。日本での成功事例が必ずしもベトナムでも成功するとは言えないので、成功事例をベトナム流にアレンジしてもらうというのが大事だと考えます。
――今後の計画や展望を教えてください
我々にとって 街づくり とはマンションを作って、購入してもらうことではありません。暮らしを営んでもらうためにマンションを作り、暮らしを充実させるために、周囲に商業施設や文化施設を建設し、公共交通の運営や学校の誘致・設立、日系病院の誘致、通信インフラを整える等、弊社を中心に様々な企業・団体が参画して20〜30年後を見据えた取り組みをしていきたいと考えています。
三菱地所レジデンスさんとのプロジェクトのほか、IT・通信面ではNTT東日本さんが進出され、川崎フロンターレさんや医療のメディヴァさんなど、ビンズオン省に仲間が増え始め、多種多様な企業・団体とアライアンスを組んで、いいものを一緒に作っていきたいと思っています。街は暮らす人の多様性によって作られます。その需要に応えるためにもプレイヤーは多いほうがいいのです。
歴史に残るプロジェクトを手掛けている自負があり、7年経ってようやく街っぽいものが出来始めたと実感しています。今後はさらに加速させていきたいですね。
2012年3月に「東急電鉄株式会社」とベトナムの大手デベロッパーである「ベカメックスIDC」による合弁会社として設立。東急電鉄の不動産開発の経験やノウハウを活かし、ビンズオン省ビンズオン新都市で1000haにおよぶ「東急ビンズンガーデンシティ」の開発を推進している。
DONGKUN OH
1969年生まれ。大学および大学院で都市計画を専攻し、博士号を取得。1993年東急電鉄株式会社に入社。多摩田園都市や渋谷駅周辺の都市開発プロジェクトに携わり、2011年にベトナムに赴任した。2017年4月より現職。
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