文化や人々の生活に寄り添い、暮らしに欠かせない存在に

2019年7月に設立10周年を迎えるシャープエレクトロニクス(ベトナム)。冷蔵庫やエアコンなどの白物家電や、複合機などローカルフィット製品に力を入れ、成長を続けている。これまでの歩みや、今後の展望や目標を聞いた。

身近な家電類から徐々に
ブランドの認知度を向上

――設立当時と現在で、販売製品などに変化はありますか

久保 当時の日本が「液晶のシャープ」として、液晶テレビを全世界で普及させることに尽力していたことから、ベトナムでもまずは液晶テレビから参入しました。

現在、売り上げの大半を占めるのは冷蔵庫やエアコン、洗濯機などの白物家電です。ベトナムは親日国で日本製品への信頼が厚く、電子レンジなどの調理家電のイメージを前に押し出しながら、設立当初よりブランドの普及に努めてきました。

タイで製造した製品を輸入販売するほか、他社に製造を依頼して、自社ブランドとして提供するOEMを活用しながら、拡大を図っています。

また、経済が成長し、生活が豊かになっていく過程で、ベトナム人は特に食に関してお金をかけている印象を受けます。今、私が期待しているのは電子レンジの伸びですね。近い将来、一家に1台の時代が来ることを想定し、じっくり頑張っていきたいと思っています。

電子レンジの販売促進をする一方で、電子レンジの上位互換製品であるウォーターオーブン「ヘルシオ」を使って量販店で実演販売をしたり、料理教室やユーチューブ(YouTube)などで調理の様子を紹介するなど、上位機種をアピールすることで、周囲に配置した冷蔵庫や調理機器・調理家電が紐づいて売れていく傾向があります。

経済成長のスピードに負けない
一歩先の提案を

2018年12月開催のディーラー大会では、10周年を記念したキャンペーンを打ち出した

――ベトナムならではの取り組み、特徴は

久保 設立当初、2009年頃のベトナム国内におけるエアコンの普及率はおそらく全国で10%以下だったんです。エアコンが普及していないと空気清浄機まで需要が及ばないという中で、「蚊取り機能付き空気清浄機」を日本に先駆けて、ベトナムで販売を始めました。日本でも人気のある空気清浄機をシャープの強みとして位置付けているためです。空気清浄機をはじめ、エアコンや冷蔵庫にPCI(プラズマクラスターイオン)機能を付帯させるなど、PCIを核にブランドを作る取り組みもしています。

追い風になっているのが、ベトナム人の関心事のひとつに「空気汚染」が挙げられることです。

エアコンの普及率がまだまだという段階で空気清浄機は贅沢品に位置するため、発売当初は手ごろな価格帯の製品を広く普及させることを想定していましたが、除湿・加湿機能付きや、広い面積をカバーする機種など、環境問題に関心のある高所得層に高価格帯の製品が売れる傾向があります。

じっくり数年をかけて、ようやくベトナム人の家庭にも空気清浄機が受け入れられてきた手応えを感じています。また、ベトナム在住の日本人の方にも「シャープの空気清浄機を使ってます」と言って頂けることが多く、広く普及していることを実感します。

IoT対応の空気清浄機は外出先からでもスマートフォンで操作が可能だ

また、ベトナムは電気代が物価に対して割高であるため、省エネ効果をもたらすインバーター付きのエアコンに人気が集まるなど、省エネに対する意識が非常に高いと感じています。インバーター付きのエアコンに弊社はPCI機能と携帯電話で外出先から操作ができるIoT(モノのインターネット)機能を付けるなど、一歩先へと先頭を切って取り組んでいます。

――設立10周年を迎え、今後の目標や展望を教えてください

久保 アンドロイド搭載スマートフォンにおいて、シャープは日本でシェア1位を獲得しており、いよいよASEANでも本格的にスマートフォンを発表しようと考えています。ベトナムにおけるスマホ市場は、すでに国内や海外ブランドが参入している激戦区ですが、シャープのブランド名を浸透させるためにも積極的に参入していこうと思っています。2019年末を目標に、すでに日本国内で販売されている有機ELディスプレイを採用した「アクオスゼロ(AQUOS zero)」のほか、4~5モデルを発売する予定です。2020年の旧正月(テト)前商戦に間に合わせたいですね。

近年、中国や韓国のメーカーがこぞってベトナムに工場を置いて家電の製造を始めている点に脅威を感じています。ほかのASEAN諸国と比較しても、ベトナムはより新しいものが好まれ、最先端の製品に需要が集まる傾向があります。弊社が生き残っていくためにも、地産地消のビジネスモデルの立ち上げに向けて動いていきたいと思います。

COMPANY INFO
2009年1月の外資開放政策をきっかけに、家電製品・事務機器販売会社としてシャープエレクトロニクス(ベトナム)が誕生。2009年7月から営業を開始した。空気清浄機やテレビ、冷蔵庫、エアコン、電子レンジなどの白物家電や複合機などオフィス機器の販売を行う。
ゼネラルダイレクター 久保 正史
Masashi Kubo
1983年シャープ株式会社に入社。フランス、カナダの関係会社での勤務を経て、2008年にシャープエレクトロニクス(ベトナム)の立ち上げで来越し、2014年に帰国。その後2017年に再来越し、現職。