駐在員が増加する今だからこそ日本水準の環境を整えたい

日系のホテル機能を兼ね備えたサービスアパートメント「ロイジェントパークスハノイ」が2018年6月にハノイで開業した。土地と建物の所有者として事業を行う「ディーティー(DT)デベロップメントベトナム」代表の助川氏に、開業直後の反響や今後の計画を聞いた。

海外で新サービスに挑戦日本人の安心生活をサポート

――「DTデベロップメントベトナム」設立から約2年が経ちました

助川 弊社はハノイ・カウザイ区の不動産開発事業「(仮称)ビナタタワーズプロジェクト」を進めるため、2016年9月に大和ハウス工業と大成建設による現地事業会社として設立されました。「ロイジェントパークスハノイ」は、第1期開発にあたります。

実は、設立当初は私とベトナム人女性スタッフのたった2人しかいませんでした。これまでお互いを尊重し合い、現在も仕事の良きパートナーとして頑張ってくれています。彼女の貢献もあって、現在は50人近くの従業員を抱えるまでになりました。

私は常に「ベトナムで仕事をさせてもらっている」という意識を持っています。決して高飛車にならず、ベトナム人の部下からも様々なことを学ぶ姿勢を大切にして、仕事の良きパートナーとして接する。それが会社を軌道に乗せるコツかもしれませんね。

――日系のサービスアパートメント兼ホテルをハノイで開業した理由を教えてください

助川 大和ハウス工業と大成建設の両社にとって、ベトナムでサービスアパートメント事業を手掛けるのは初の試みです。大和ハウスグループとしては2055年の創業100周年に10兆円の売上目標があり、それを達成するためにも、日本国内だけでなく海外でも新しい事業を行う方針があります。

また、近年のハノイは日本人の駐在員や出張者の数が増加傾向にあり、日本では当たり前にできることがベトナムでは難しいといったことも多いので、日系100%のサービスアパートメントの需要は今後高まると見込んでいます。だからこそ「ロイジェントパークスハノイ」では日本語対応が可能で、質の高い日本食が食べられるレストランや大浴場などを設けるなど、日本人にとって魅力のある施設づくりに特に力を入れました。

――開業までに苦労したことはありますか

助川 意外にも日本側との調整で苦労しましたね。例えば大浴場は当初、日本側のスタッフは混浴を想定していました。外国では大浴場に水着を着て入浴することをイメージしていたようです。それを払拭するために現地の他の施設の事例を紹介するなど、やっとのことで男湯と女湯が別々になりました。なにしろ、プロジェクトメンバーの中で私だけが現地のサービスアパートメントで暮らし、実際に体感している状態でしたので、メンバーに現地の慣習を理解してもらうのが一番苦労しました。今となってはメンバー全員の知恵や思いが結集された作品ができたと、このプロジェクトに関わったすべての人に感謝の気持ちしかありません。

開業直後から契約は順調今後は第2期開発に着手

――開業後、入居者からの実際の声はいかがでしょうか

助川 本当に嬉しいことに、「すごく良い、快適、安心」といった言葉をいただくことが多いです。サービスアパートメントとしては200室を用意しており、2018年7月現在、開業後1ヶ月足らずで23組のお客様が既に入居済み、ほかに契約済みと予約を合わせて12組、商談中が20組で、特に週末は見学の予約が続いています。

短期滞在用としても利用できる住戸は56室。サービスアパートメント用の部屋でも、空きがあればホテルユースとして利用できる

開業したばかりということもあり、不具合が発生した場合は早急に対応をしています。しかし、日本人のお客様は我慢や遠慮をされる人が多いです。なので、できるだけ私たちからお客様にお声がけをしてヒアリングを行い、改善できるところはすべてお受けする方針でいます。

――ホテル機能が備わっていることの利点を教えてください

助川 出張者がハノイに来た際、駐在員と同じ宿泊先であれば送り迎えの必要はなくなり、アテンドもしやすくなります。食事や簡単な打ち合わせも館内で済ませることができるので、駐在員の負担も大幅に省けるでしょう。まずは1人でも多くの人に見に来ていただきたいので、見学等の予約はいつでもお待ちしております。

――今後の計画を教えてください

助川 「(仮称)ビナタタワーズプロジェクト」の第2期として、「ロイジェントパークスハノイ」と隣接する形で、サービスアパートメントのほか、オフィスやコンビニエンスストア含む商業施設、クリニックや託児所なども入る複合ビルを建設する予定です。

社内では、ベトナム人が活躍できる職場環境をしっかりと整えたいと考えています。例えば、ハウスキーパーの一般職として入社した社員でも、将来的にはマネジャー職に就いてもらい、スタッフに指示できるやりがいのあるポジションを用意したいです。

私たちはベトナムで働かせてもらっている立場ですから、どうすれば雇用したベトナム人のためになるのか、それを常に意識して、ベトナム人の良さを伸ばせる環境を提供していきたいですね。

COMPANY INFO
2016年9月、大和ハウス工業と大成建設がハノイで設立した事業会社。カウザイ区で不動産開発「(仮称)ビナタタワーズプロジェクト」を進行中で、第1期開発の「ロイジェントパークスハノイ」は2018年6月に開業した。現在は第2期の着工に向けて準備中。
ジェネラルダイレクター 助川 浩一
KOICHI SUKEGAWA
1967年生まれ。1991年、大和ハウス工業に入社。集合住宅営業所の課長、所長などを経て、2013年4月にダイワハウスベトナムへ出向。2015年12月に大和ハウス工業ハノイ駐在員事務所立ち上げと同時に移籍し、DTデベロップメントベトナム設立後は同社代表を務める。