【ベトナム経営】vol. 23
Money Forward Vietnam
マネーフォワードベトナム
オフショアではなくワンチームで
ベトナムからイノベーションを
「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに、自動家計簿・資産管理サービスやビジネス向けクラウドサービスを開発・提供しているマネーフォワードが、同社初となる海外子会社をベトナムに設立。2019年1月のオフィス開所からの変化や、今後の目標を聞いた。
メンバーの成長を促し
文化や慣習を尊重した組織に
――初めての海外子会社の設立にベトナムを選んだ理由は
都築 2017年にデジタルクリエイティブスタジオ、サンアスタリスク(旧フランジア)のハノイ拠点内に、オフショア開発のチームを立ち上げたことがベトナム法人設立の前段階と言えます。そこでは現在もベトナムでマネジメントを担当している日本人エンジニアが、ベトナム人エンジニアの開発チームの指揮を取っていました。プロジェクトを進める中で、ベトナム人の気質などを知る事ができ、「ベトナムで本格的にやってみよう」と、マネーフォワードの創業メンバーの1人であり、取締役だった私が2018年にハノイに移住して法人立ち上げの準備を始めました。
そもそも、ハノイでオフショア開発を始めたきっかけは、日本国内のエンジニアの数が減っていて、採用が年々難しくなっていることがあります。新しく始めたいプロジェクトはたくさんある、既存サービスのアップデートもしたい。だけど、実現するにはエンジニアが足りないというジレンマがありました。これを解消するためにも、海外進出は避けては通れないだろうという社内の共通認識があったため、ベトナムに子会社を設立することに関しては「来るべき時が来た」という感じでした。
準備期間を経て、2019年1月にホーチミン市にオフィスを開所しました。当時16人だったメンバーは現在40人に。100人体制を目指して、組織の仕組み作りに取り組んでいます。
ただ、1年前と比較して、ベトナムでもエンジニアの採用が難しくなってきていると感じます。日系・欧米系企業とエンジニアの取り合いになっている状況で、弊社ではメンバーに気持ちよく楽しみながら働いてもらうことに注力しています。そのためには、仕様書が届いてそれ通りに作るよりも、自分が何を作っているのかを知り、日本のどういった社会課題を解決することに役立っているのか、エンジニアの皆さんに納得して取り組んでもらう事が何より重要ではないかと考えます。「オフショアではなく日本とワンチーム」であること、マネーフォワードの一員である意識を持ってもらうためにも、月に1度の全体会議などで、会社としてのミッションやビジョンを全員に対して伝えています。
――事業内容を教えてください
都築 個人や法人に対してお金の課題を解決する日本向けのプロダクト製作の一部を担っています。また、この1年ではベトナムで本番運用を始められた事が大きいですね。これまで日本でしかできなかった事ができるようになり、今後ベトナム国内向けのサービスを作った場合も1からすべて完結できるようになりました。
まだ組織の規模が小さいので、メンバー全員の顔が分かっていて、気軽に話ができたり、「30人ってこんな感じだったな」と日本での創業期を思い出します。優秀なメンバーが入って来て、どんどん会社が大きくなりつつある時期のもっと新しいことができそうという期待感にワクワクしています。純粋に立ち上げは楽しいなと思いますね。ただ、その一方で、人数が増えるにつれてこういう問題が起きるだろうと予測しながらやっているところもあり、その点は日本での経験が生きていると言えます。
開発力を強化しベトナムを
東南アジアの主要拠点に
――現在感じている課題は
都築 ベトナム人エンジニアのクオリティーやスピードが日本人エンジニアに追いついていない部分がある点でしょうか。これだけ経済成長のスピードが早いと、ベトナムと日本の給与が同レベルになるまでそんなに時間はかからないでしょう。それまでに力を底上げしていかなければと感じています。それに対して、若手の日本人エンジニアを中心に社内勉強会などを実施したり、やり方がチームごとにバラバラだったりするのを統一すべく、マネーフォワードベトナムのフォーマットを決めることなど、標準化を進めています。
「失敗してもいいから、とにかくやってみよう」というのは日本と変わらないですね。特にホーチミン市はベンチャーマインドが強く、どんどんやってみようという気質は我々のようなベンチャー企業に合っていると感じています。
――今後の目標を教えてください
都築 経済成長が進むにつれ、ベトナム独自のお金の課題が出てくるはずです。我々はフィンテック企業として、ベトナムでもお金に関する課題や悩みを解決できるサービスを提供したいです。そして、ゆくゆくはベトナム発のサービスを日本に持っていくことはもちろん、様々な国に展開していきたいと考えています。ただ、ベトナムで金融系のサービスを提供するとなると、それに適したライセンスを取得しなければならず、すでにライセンスを持っている現地企業と提携することなども視野に入れています。
また、将来的にベトナム拠点はベトナム人スタッフだけで自立できるように成長させたいです。第1歩として、日本語学科がありITと日本語のスキルを両方持った人材がいるハノイ工科大の学生を採用し、すでに日本で働いてもらう試みも始めています。日本でスキルを磨いたエンジニアがベトナムに戻ってきても活躍できる場を提供し、技術的に切磋琢磨できる人材交流の流れを作っていけたら。そのためにも、ベトナム人と日本人の信頼関係をもっと強固にしていかなければと思っています。
自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワードME」などを開発・提供しているマネーフォワードの海外子会社として2018年7月に設立。ホーチミン市に2019年1月オフィスを開所し、既存サービスの改善や新規サービスの開発のほか、将来的にはアジアの主要拠点となることを目指す。
Takayuki Tsuzuki
1975年生まれ。大学院を卒業後、2001年ソニー株式会社入社。2012年創業メンバーの1人として株式会社マネーフォワードに参画した。ベトナム法人立ち上げに伴い同社取締役を退任し、2018年より現職。
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