価値を高める開発を通じ
持続可能な街づくりに貢献

2020年10月、ハノイにグレードAのオフィスビル「キャピタルプレイス」が開業した。不動産デベロッパーの「三菱地所」とシンガポールの「キャピタランド」が共同で開発。三菱地所ベトナム社の軍地氏に、同ビルの特徴や今後の展望などについて聞いた。

ベトナム人スタッフとの
協業なくして事業の成功なし

――2019年のベトナム進出の背景について教えてください

軍地 弊社は2008年、シンガポールにアジアで初の拠点を設立し、東南アジアの不動産開発事業を進めてきました。東南アジアで事業を遂行するにあたり、シンガポールはハブとして最適な場所だと考えたからです。その後、事業を各国で拡大していく中、2019年4月に経済の発展が著しく、親日的かつ案件数も多いベトナムに現地法人を設立する流れとなりました。外資の不動産企業でも100%の出資が可能である点も魅力的でした。

当時、ホーチミン市周辺での案件が多かったため本社はホーチミン市にありますが、近年はハノイの案件数も増えてきました。首都で行政機関に近いこともあり、2020年3月にハノイ支店を開所しました。

――御社の特徴、強みは何ですか?

ホーチミン市で区分所有しているオフィスビル「リバーバンクプレイス」。2017年1月の取得後はメインエントランスやトイレなどを改装し、入居率100%を達成した

軍地 弊社は日本でオフィス、住宅、商業・物流施設の開発・販売・運営などを主に行っていますが、それ以外にもグループで、設計、ホテル、空港事業といった、不動産に関するさまざまな事業を幅広く手掛けています。ベトナムでは2010年から事業を開始しているので、今でこそ10年の実績をアピールできますが、初めて弊社を知る方には、事業の分野の幅広さを伝えることで興味を持ってもらいやすいところがあります。

今後我々がベトナムで開発案件を増やしていくためには、例えば機能的な設計の考え方や効率的な間取り、オペレーション方法など、日本で蓄積してきたノウハウとクオリティをどのようにベトナムで活かしていくのかを考え抜くことが大切だと思っています。日本で評価されていることをそのままベトナムに導入しようとしても、コストが高くなったり、ローカルの人々から評価されないケースもあります。その辺りは現地の歴史や文化、生活慣習などを理解した上で、うまくローカライズしていくことが重要であり、そのためにはローカルスタッフとの協業が欠かせません。当社が開発を検討している案件では、各場面で壁にぶつかることが多く、そういう時こそローカル社員と知恵を出し合いながら、地権者や共同事業者とコミュニケーションを密に取ってお互いの信頼関係を築くよう心がけています。

旧・新市街の中心地に建つ
将来性抜群の新ビルを開業

「キャピタルプレイス」の地下1階はカフェやスーパーマーケットが入居予定。地下2階以降は駐車場。ハノイ都市鉄道3号線「キムマー駅」とも接続予定

――「キャピタルプレイス」の特徴を教えてください

軍地 設計には、弊社グループの三菱地所設計が関与しています。2つのタワーがあり、どちらも37階まであります。1階がロビーで、2~19階が低層階、20~37階が高層階と分かれていて、低・高層でそれぞれにエレベーターを8台ずつ、計32台を設置し、エレベーターの待ち時間を短縮できるようにしました。また地下1階には商業ゾーンもあり、将来的には地下鉄の駅と直結するため、雨に濡れずに電車に乗ることもできます。

オフィス内の有効率を高める工夫もしています。例えば、柱をすべて外側に置いた無柱空間を実現したほか、配線を通しやすく床は15㎝高くしています。床にはノックアウトパネルを設けていて、上階と下階を内階段で繋ぐことも可能です。

また、ハノイでは貴重な、アメリカの環境性能評価システム・リード(LEED)のゴールド認証を受けたビルでもあります。省エネルギーで、あらゆる仕組みを通じて環境に配慮した構造になっているので、環境への意識が高い企業には特におすすめできます。

2020年11月現在、日系企業や欧米などの外資系企業を中心に幅広く引き合いをいただいております。実は、グレードAオフィスとしてはホーチミン市やハノイ・ホアンキエム区のオフィスビルよりも賃料水準は全体的に低めに設定されているので、入居を検討していただく価値はあると思います。

――今後の目標を教えてください

軍地 今後もハノイとホーチミン市の2都市を拠点にして、オフィスビルや住宅の開発、複合開発を年1~2件は手掛けていきたいと考えています。もちろん、物件は開発して終わり、というわけではありません。持続可能な開発目標(SDGs)に代表される、持続可能なまちづくりの視点をベトナムでの開発にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

弊社はこれからも変わらず良質なものを作っていくので、弊社所有物件への入居・購入を検討していただける際はお気軽にお問い合わせください。

 

COMPANY INFO
「三菱地所」は東京都千代田区に本社を置き、国内外のオフィスビルや商業施設などの開発を行う。シンガポールの三菱地所アジア社が100%出資するベトナム現地法人は、2019年4月に設立。ベトナムにおいてオフィスビルや分譲住宅など、さまざまな不動産事業に参画している。
General Director 代表 軍地 雄介
YUSUKE GUNJI
1979年生まれ。東京都渋谷区出身。大学卒業後の2002年に「三菱地所」入社。住宅事業部、「三菱地所レジデンス」社への出向などを経て、2016年4月にシンガポールの三菱地所アジア社へ赴任。三菱地所ベトナム社の設立に伴い2019年4月に来越し、現在に至る。