2014年1月、イオンモール1号店をホーチミン市にオープンさせたイオンベトナム。同11月には2号店をスタートさせ、3号店は今秋の予定。地元スーパー2社との業務提携も進める。ベトナム進出を加速させる西峠社長の意図とは何か。

続々と店舗展開を進める中、他社との資本・業務提携も

代表取締役社長 西峠泰男
撮影:大木宏之

―― 今後の出店計画を聞かせてください。

西峠 2号店の「イオンモール ビンズオンキャナリー」を出店した後、今年中に3号店をハノイに、2016年には4号店をビンタン区にオープンする計画です。5号店は候補地を決めて、現在交渉中です。出店はその後も続けて、目標は2020年に20店舗、売上げを10億USDにすること。この数字はベトナムでシェアトップクラスの「Big C」や「Co.opmart」と同規模です。

――  ローカルのスーパーマーケット・チェーンとも資本・業務提携をしました。

西峠 「Fivimart」と「Citimart」です。イオンの歴史は合併の歴史。これを繰り返して成長を続けてきた文化があります。地域の有力なパートナーと組んでローカルのノウハウを学習し、共に成長することが狙いです。

例えば、マレーシアに出店した30年前当時、イオンの店舗は小さかったのですが、店舗規模が大きくなるにつれ、同じように小さかったテナントさんと共に拡大成長をしていきました。集客をして、テナントさんが来て、商品開発をして……を繰り返す中で弊社だけでなく従業員やパートナー企業も成長して、地域や国にも貢献できる。イオンはポリシーとして「地域産業」を目指しています。

―― それにしてもスピード感があります。

西峠 集中的な出店で市場シェア向上を狙う、「ドミナント戦略」でもあります。郊外型大規模店としてイオンモール、街中での生活インフラにはスーパーマーケットやコンビニと、エリア別に展開して「面」でのシェアを高めます。こうすることで物流やITシステムなどを統合でき、効率化やコストダウンが図れます。店舗間の人材交流なども併せて、様々なグループシナジーが期待できるのです。将来的なビジネスのインフラが見えて来るような、仕組み作りを進めたいですね。

新規国への進出方法にはある程度の手順があります。例えば、マレーシアではACS(イオン・クレジット・サービス)が最初に進出し、その後に続いて小売業やサービス業を展開していきました。しかし、ベトナムではこれを一気に進めて、総力戦でいくつもりです。

―― ベトナムが魅力的な市場ということですね。

西峠 はい。ベトナムではイオンのターゲットであるファミリー層や子どもが増加していて、外資系小売り企業への規制緩和も進んでいます。また、都市部が過密状態で、郊外エリアがこれから発展しつつあります。GMS(大型の総合スーパー)を展開するチャンスだと思いました。

ただ、今後は多くの外資系企業が参入して、競争は激しくなるでしょう。そのため、もっと進化した店舗を作りたい。これまで展開してきた店舗は、ベトナムでは最大級のショッピングモールでも、日本では中規模店なんです。もちろん、それなりの投資額が必要になりますから、簡単にはいきませんが。

デパートの思い出 その気持ちをベトナムに

タンフーセラドン店内のショッピングセンター

―― 順調に事業が伸びている理由は何でしょう?

西峠 1号店の開店前に感じたのは、子どもを気軽に遊ばせられる場所が少ないことです。一方、イオンには、アミューズメント的な施設作りにノウハウと経験があります。また、ベトナムにはカフェ文化があり、皆さんがそこでおしゃべりを楽しむ。買い物だけでなく、食べる、遊ぶ、などを加えた、1日過ごせるライフスタイルの場を提供したいと思いました。そこが評価されたと思います。

―― これから進めていきたいことは何ですか?

西峠 いっぱいありますよ(笑)。例えば、現在はイオンGMS内で自社ブランドの「トップバリュ」を輸入・販売していますが、今後はベトナムで商品開発と生産を行いたい。ベトナムに合わせた内容と価格で提供したいと思います。マレーシアやタイではすでに進めています。

また、人材育成に注力したいです。イオンにはASEAN各国で共通のビジネススクールがあり、従業員は各自の段階に合ったカリキュラムで学びます。このベトナム版を準備している最中です。ベトナム人には「学びたい」という思いが強く、企業文化や私たちのポリシーなども知ってほしいと思います。

―― 勝機はありそうですね。

西峠 ベトナムは「一番」を目指せる国だと思います。確かに、Big CやCo.opmartとは、店舗数でも売上げでもかなりの差がありますが、それでも「トップの背中は見えている」と感じています。子どものころの私は、家族でデパートに行くのが楽しみだったんです。そんな気持ちになれる、家族そろって楽しめるショッピングセンターを、ベトナムにたくさん作りたいですね。

AEON VIETNAM CO., LTD.
General Director 西峠泰男

1967年生まれ。大学卒業後にジャスコ(当時)に入社。その後、マックスバリュ、イオンに転属し、店長や事業部長などを務める。2009年にイオンのベトナムプロジェクトチームのリーダーに。2012年に現職となり、ベトナムに赴任。