1996年に設立されたロッテベトナム。2006年にキシリトールガムを投入すると売上が急上昇し、現在ではベトナムのガム市場で30%以上のシェアを持つ。マーケティング、営業、ベトナム歯科医科会との連携など、戦略の手は緩めない。

キシリトールに全力投球


代表取締役社長 山田暁大

―― ベトナムには系列企業が多くありますね。

山田 ロッテリア、ロッテマート、ロッテホテルなどの22事業は韓国グループの系列で、ガムなど菓子類の販売を行う弊社は日本ロッテからです。シナジー効果を活かして連携しています。

―― 御社の主力商品は何でしょう。

山田 虫歯予防のできるガムの「キシリトール」です。弊社の売上の5割以上を占めており、子ども用のバブルガムも人気です。これらのガムはビンズン省で生産していまして、「TOPPO」や「コアラのマーチ」といったビスケットはタイ工場からの輸入です。それぞれ売上の10%と貢献しています。
 弊社は1998年に創業しましたが、当初は業績が伸び悩んでいました。しかし、ロッテが2005年からグローバル事業に注力し、2006年にベトナムでキシリトールの販売を開始すると、売上は数倍規模に伸びました。近年の売上は横ばいが続いていますが、今年は前年比120%を目指しています。

―― ガムのシェアは33%だそうですね。

山田 ベトナムでの1位はアメリカのリグレー社で、シェアは48%です。ブランド別では同社の「クールエア」がトップで、今年7月の調査でシェアが26.9%なのですが、キシリトールは26.3%と追い上げています(調査はACニールセン)。この本が出る9月には、逆転しているかもしれません(笑)。
 昨年からベトナム歯科医師会との連携を強化し、臨床試験を行ったうえで、ロッテキシリトールには虫歯予防の効果があるとの認証を受けました。今年6月からは商品パッケージ、販促材料、テレビCMなどに認証マークである「RHM」を使っています。

―― 効果はありますか?

山田 はい。「ガムを噛んで虫歯予防」がまだ信じられていないようですが、一方ではベトナム人の虫歯罹患率は90%とも言われ、このマークの認知度は高いようです。キシリトールへの信頼度が上がっていることを徐々に感じています。
 昨年からは虫歯の啓蒙活動にも力を入れており、マーケティングでは人気女優のニャーフンさんをキャラクターに起用し、CMやイベント活動を拡大しています。キシリトールにはマーケ、営業、資材、プロモーションなど、全てのリソースを集中させていると言っていいくらいです。

販売直販員が支える流通


ベトナムで販売されている各種のキシリトールガム

―― 商品の流通はどのようにしていますか?

山田 スーパーやコンビニへの近代流通と、パパママショップなど小さな小売店が対象の伝統流通の2種類があります。
 前者は全国で約2000店舗との取引があり、売上の約20%、後者は約30万店舗あり、売上の80%となっています。店舗単位の売上は近代流通のほうが大きく、特にホーチミン市では近代流通の割合が上昇していますが、伝統流通でいかに販売ボリュームを取るかが事業のカギです。
 伝統流通では弊社の「営業直販員」が毎日バイクで商品を届けています。弊社は全国に5支店あり、約1500人の従業員がいますが、約1200人は営業部隊で、そのうち約900人が営業直販員です。
 
―― どのような仕事をしているのですか?

山田 1人が毎日1ルート、平均50店舗を回ります。月曜から土曜まで異なる6ルートなので、1週間で300店舗を回るようになります。バイクの後部に取り付けた箱に様々な商品を入れて、小売店に売りに行き、その場で現金を回収します。問屋を介していますので、工場から商品を問屋に出荷し、営業直販員は問屋で商品を受け取ってから、各店に行くわけです。
 タイやインドネシアにも同じ仕組みはありますが、900人という規模はベトナムだけです。交通渋滞も雨の日もありますから、大変な仕事です。一方、近代流通では約150人の従業員がスーパーなど各店を直接担当しています。ここでは問屋を使っていません。

―― 事業は順調のようですね。

山田 実は、ベトナムのガム市場は縮小傾向にあります。経済成長の中で、何らかの理由で、ガムに使うお金が減っているのだと思います。そこで、「味を楽しむ」、「リラックスできる」といった嗜好品としてではなく、「気軽に美味しく虫歯予防」という機能価値をアピールして、キシリトールを普及させるつもりです。
 また、ベトナムをガムの生産拠点として、キシリトールを中心に東南アジア各国、中近東、アフリカなどへの輸出拡大を考えています。将来は総合菓子メーカーとして、ベトナムでもチョコレート、アイスクリームなどを販売する、次のステップに進みたいですね。

LOTTE VIETNAM CO., LTD.
General Director
山田暁大

1975年生まれ。大学卒業後にロッテ商事株式会社に入社。国内営業を担当後、ロッテ本社国際部(当時)に異動。2009~2012年にロッテベトナムに営業副社長として赴任。その後、ロッテ本社グローバル戦略本部などを経て、2016年に現職として再赴任。