トナムでは今年3月初めの首相の承認を経て、3月16日以降、電力料金が平均7.5%値上げされています。石炭を含む燃料費高騰による発電コストの上昇、国営企業であるベトナム電力公社の多額の損失に対処する必要性、および5%のインフレ目標達成等が背景のようです。

特に製造業者および一般低所得者層等の電力消費者側への影響が指摘されています。他方、ベトナムはこれまで東南アジアで電力料金の最も低い国の一つにとどまっており、電力セクターへの外国投資が呼び込めず、増大する電力需要に対応できないとの指摘がなされてきました。

当初、1年単位で固定されていた電力料金は2011年の首相決定により年4回まで改定が可能となり、2013年8月には平均5%値上げされました。2014年には、電力料金の設定・計算方法に関する法令が制定されています。

再生エネルギーの分野でも法整備が進められています。バイオマス電力および固形廃棄物を利用したエネルギープロジェクトについては、2014年の法令制定により、投資家の資金調達上の便宜に加え、輸入税、法人税および土地使用料等の免除または軽減が図られています。電力料金については、固形廃棄物を利用したエネルギープロジェクトでは種類に応じて10.05または7.28USセント/kWhとされました。しかし、バイオマス電力の料金は5.8USセント/kWh(従来は実務上4USセント/kWh前後)にとどまっており、投資を奨励するには不十分だと指摘されています。

2011年に制定されたマスタープラン7の「2030年に再生エネルギーの電源構成6%」の達成も踏まえた、今後のベトナムのエネルギー分野における動向は着目に値すると言えるでしょう。

岸本 明美
Kishimoto Akemi
DFDLに勤務する日本国弁護士及びCFA協会認定証券アナリスト。イングランド及びウェールズ(英国)のソリシター。フランスHEC卒。エネルギー・インフラプロジェクト関連、M&A等を担当。
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