日本を中心にアウトソーシング(オフショア開発)先として成長を遂げてきたベトナムIT産業。エンジニアが取り合いになるほど好景気の中、新しい波も生まれている。業種、職種、ポジションの違う多くの人たちが、それぞれの立場で語る。
 
 

ベトナムを代表する大手IT企業のFPTグループ。巨大企業は今、何に注目して、どう動いているのか。FTPソフトウェアのホーチミン市支社トップがIT業界のトレンドを語る。

IT市場拡大に貢献 スタートアップ企業

FPTソフトウェアの事業はオフショア開発が約7割で、売上の55%が日本企業。残り3割がプロダクト開発やソリューションだ。オフショアではCRM、ERP、IOT、クラウド、人事システムなどの案件が多い。

「FPTソフトウェアには1万1500人がおり、そのうち1万人以上がITエンジニアです」

近年注目しているのが、ベトナム人のスタートアップ企業だ。才能ある企業には、規模は小さくてもアメリカ、ヨーロッパ、シンガポールなどから投資があり、IT市場の成長に貢献しているという。 彼らが開発するのはアプリやゲームが多く、一つはマネタイズが簡便なApp StoreやGoogle Playで公開する。もう一つのトレンドはシェアリングエコノミーで、目指しているのはUberやGrabなどのITインフラ。ベトナムの例では配送アプリの「ザオハンニャイン」が有名だ。

「FPTも2015年にFPTベンチャーズを設立して、コミュニティを作り、現在では約100社のスタートアップ企業が所属しています。アイデアを共有し、リレーションを高めて、サポートや投資を行います。FPT単独では今後生き残れないと考えており、イノベーションを呼び込む意図もあります」

新しい価値を生み出す 多彩なコラボレーション

FPTにとって理想的なエンジニアを聞くと、例として経験4~5年の27歳、AndroidやiOSなどモバイル系の経験があり、サーバー、データベース、ネットワークにも強いマルチタイプで、フロントからバックエンドまでを知る人。残念ながら求人市場にはなかなかいない。

「エンジニアにスキルはありますが、弱みはフィンテックなどの最新知識がなく、そうした分野での活躍が難しいことです」

技術力の向上と共にITエンジニアの月収も上がり、新卒で300~400USD、2~3年経験を積むと700~800USDになるという。コスト上昇はオフショア開発のデメリットになるため、競合他社と協力して、より魅力的なビジネスを模索しているという。

「FPTインターネットソリューションズ、FPTテレコムと組んで、新しい試みもしています。例えば、Misfitのようにソフトだけでなくハードも開発すること。今後に期待してください」



出典:情報通信省「ITと通信白書」2017年版