人材紹介会社に直撃! 「ベトナム人採用」の真実
撮影:杉田憲昭、大池直人
製造業とITで求人増、日本語人材5万人の姿
約270万人という膨大な求職者データベースを持つ求人サイト、ベトナムワークス。その運営会社であるナビゴスグループ内には人材紹介会社であるナビゴスサーチも持つ。どちらもベトナム最大級の人材会社だ。
職種は経理と事務が人気 日本語人材は実質1万人
ベトナムワークスの登録者はほぼ全員がベトナム人。男女比は男性44%、女性56%。年齢は22~35歳が72%を占め、そのうち22~30歳が45%と圧倒的に若者が多い。
そのほとんどが新卒やインターンシップを除く実務経験者であり、スタッフレベルが50%、チームリーダーやスーパーバイザーが14%、マネジャー層が8%、ダイレクター・CEOが2%となっている。マネジャー層以上の採用は、ナビゴスサーチで行うことが多いという。
また、希望する職種で最も多いのが「Accounting」(経理)であり、「Administrative/Clerical」(事務)、「Sales」(営業)と続く。
「2013年以降の新たな登録者に限っても、この順番で希望者が多くなっています。アカウンティングは一般経理から企業監査まで仕事は幅広いですね」(越前谷氏)
一方、企業からの求人数が多い職種は1位と2位が上記と同じで、3位は「Production/Process」(生産・製造)。また、応募数が多い業界は、「Manufacturing」(製造業)、「Technology/Engineering」(IT)、「Construction」(建設業)の順。実は、「日本語人材」(日本語が使えるベトナム人)を求める日系企業が多いのも、製造業とIT系企業だという。
「ハノイでは製造業、ホーチミン市でIT系企業が圧倒的に多く、日本語人材を求める業種はこの2つで全体の7割になります」(村田氏)
同社によればベトナム内の日本語人材は約5万人。ベトナムワークスには約4万人が登録されているが、日本語能力試験「JLPT」でのN2レベル、いわばビジネスで日本語を使える人は約1万人という。また、最近では日系企業にアプローチしたい外資系・ローカル企業からの求人も増えており、人材が不足している。
加えて、この2業界では技術的な専門用語が使われること、主に郊外に拠点を持つ製造業は都市勤務を望むベトナム人に敬遠されがちなこと、IT系企業ではプログラミングと日本語の両方ができる人材が非常に少ないなど、特に採用が難しくなっている。
ただ、英語を話せる登録者は多いため、「日本語縛り」を外せば、優秀な人は採用しやすくなる。実際、日系企業もそれをわかっているようで、日本語人材を求めるのは日系企業の3割ほどだそうだ。
「例えばIT系企業では、開発経験がなくて専門用語がわかるコミュニケーターを採用し、日本語能力のないベトナム人マネジャーとコンビで働いてもらうなどのケースが増加しています。英語の能力がない優秀なプログラマの採用もありますね」(村田氏)。
一般的なベトナム人の日系企業への評価
日本語人材の多くは日本に興味があったり、日系企業での勤務経験を持つなどして、日系企業で働くことを望む人も多い。
ただ、ベトナム人求職者全体では、日系企業の評価は低めだという。
「実際には『よくわからない』といった印象でしょうか。理由は日系企業の特殊性です。スペシャリストでなくゼネラリストを求める、ジョブローテーションが一般的などは、彼らの考えにはないはず。社長が日本人に限られている点も評価を下げています。人事制度がグローバルな欧米系企業なら、昇格のチャンスがありますから」(越前谷氏)
登録者約1万2600人から回答を得たアンケート結果(2015年1月に実施)では、「転職理由」の1位が「昇格や自己開発のチャンスがない」、2位は「仕事での称賛や正当な評価がない」、3位は「貢献の割に給与が低い」、4位は「上司への不満」という結果だった。
「ベトナム人は働かない、融通が利かないなどと言われますが、欧米型の働き方に慣れている彼らは、職務の範囲を超えて何かをするより、職務範囲の中で成果を上げようとします。日系企業はこの範囲があいまいなことがあるので、不満に感じるのではないでしょうか。
大切なのは会社が個人のキャリアステップと先のビジョンを見せてあげること。これをしないと人材は育たず、キャリアを積む前に辞める人も出てくるでしょう」(越前谷氏)
登録者のキャリア(2015年1~3月期)
登録者の希望する職種(2015年1~3月期)
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