ビジネス成否のカギとなるのが、提携・合弁先となる地場のベトナム企業だ。良いパートナーシップが組めれば事業は好転し、逆なら頓挫もあり得る。では、どんな企業をどう探せばよいのか? 事業実現までのカギとは?多業種の企業に本音を聞いた。

 

爆発的な売行きで話題となっている揚げせんべい「ICHI」。2013年からの4年で3工場を稼働させるほど、生産量が増大している。ベトナム再進出に賭けた亀田製菓が選んだパートナー企業とは、明確な事業分担が特徴だ。

味、価格、設備投資…再進出を支えた戦略

2013年6月設立のTHIEN HA KAMEDAは、日本トップ級の大手米菓メーカー亀田製菓と、国内で高いシェアを持つ大手米菓メーカーTHIEN HAとの合弁企業。2013年10月には北部フンイエン省で工場を稼動し、翌11月からエビ味の米菓「YORI」を発売した。

商品の売れ行きは堅調だったが、2015年3月に発売終了となる。その理由は、2014年4月に発売した第2弾の揚げせんべい「ICHI」があまりに売れすぎて、生産体制をICHIに注力せざるを得なかったからだ。

「最初は細々と1ラインで生産していましたが、予想以上に売上が好調で店頭で欠品が続き、2014年11月からの3ヵ月間で3台の生産設備を導入しました。いずれ他のメーカーがICHIの類似品を販売するとわかっていたので、その前にブランドを広く認知させたかったのです。ここで設備投資を躊躇していたら、欠品が続いて消費者が離れていったでしょう」

2015年10月は中部トゥアティエン・フエ省に第2工場、2016年11月には南部ドンタップ省に第3工場を稼動。中部や南部への輸送コストも考えて北中南に工場を建設したのだが、ドンタップ省は原料となるジャポニカ米の調達にも便利な地だという。

「ICHI」(右)と「ICHI TOM」

「ベトナムで米菓が好まれていることは知っていました。ただ、どのメーカーも焼いた砂糖掛けや甘辛の商品で、フライして醤油を使う商品は見当たらなかった。そこで、亀田製菓の『揚一番』をベースにベトナム人の嗜好に合わせて作りました」

当初の試作品は味を濃い目にしたが、「思った以上にベトナム人はあっさりした味と柔らかい食感を好む」ことから改良を重ね、しょうゆなど一部を除いて原材料はベトナムで調達した。一方で製造コストなどは徹底的に抑え、ICHIの価格を100gで1万5000VND程度とする。このように戦略的に動けた背景には、亀田製菓が1996年に一度進出し、1999年に撤退した経験があるからだろう。

工場内の仕上げの工程(上)/工場内の包装の工程(下)

当時はベトナムの国営企業と他2社の計4社で合弁会社を設立。米菓に適した原料の調達が難しく、商品の品質が安定しなかったそうだ。納得できる商品ができた時には既に美味しくないイメージが定着しており、その後も売上は伸びなかったという。大塩氏も1996年から2年間、北部ナムディン省の工場で技術指導を担当していた。
「商品価格がバインミーと同じくらいでした。だったらバインミーを買いますよね(笑)。ベトナム人の所得がまだまだ低く、菓子は嗜好品で買う余裕もなく、時期が早すぎたとも感じています」

しかし、縁は異なもの。再進出に当たり、この20年前の関係者が現在の合弁相手を紹介してくれたのだ。

開発・管理と営業に 代表の人柄を見よ

合弁相手のTHIEN HA社は大手の米菓メーカーであると同時に、小売店に強い流通ネットワークを持つ企業。また、同グループで10年前から米菓製造販売を行っているONEONE社に物流を委託している。全国にある同社の営業拠点から、合計1000人規模の営業バイク部隊が大型スーパー、コンビ二、地場のパパママショップ等に商品を届けている。

スーパーの店頭に積まれる「ICHI」

このように亀田製菓側が新商品開発と、生産管理や品質管理など工場で行う管理業務全般を、パートナー企業は営業に専念するという事業分担が成功に寄与しているようだ。大塩氏も「役割が明確なので苦労したことは思い出せません」と語る。

また、最初の進出時はパートナー企業が3社なので決定までの時間が掛かったことから、極力少数企業での合弁が望ましいという。

商品の販売までは、亀田製菓の商品の中からベトナム人に好みの商品を選んでもらい、ベトナム人向けにカスタマイズし、マーケティング部や外部の調査会社の調査を元にさらに改良を行った。新設備を導入する場合で、開発から販売までに半年ほど必要になるという。

「弊社は紹介された1社を合弁相手と決めましたが、パートナー企業選びでは、その代表の人間性を最も重視すべきと感じます。弊社の場合は高価な車にも乗らず、無駄なお金はほとんど使わず、従業員の生活を一番に考えている代表です」

THIEN HA KAMEDAの売上は2014年度が7億円、2015年度は19億円、2016年度も増収を見込んでいる。生産終了した「YORI」は今年「ICHI TOM」としてリニューアル販売をスタートし、当面は2商品の味替え商品の投入を進める計画だ。

「近いうちにはまずは近郊の東南アジア諸国に輸出し、将来的には日本にも輸出したいですね」