中間・富裕層が増加する中で、子どもに投資する親が増えている。玩具や服などのモノから、塾や習い事などの教育系、エンタメ施設まで市場は多彩で、ニーズ拡大は必至とみられる。膨張するキッズ市場を追った。

 

日本の「キッザニア」にヒントを得て2014年に開設された「VIETOPIA」。日系企業も数多く出展する職業体験型のテーマパークには、南部を中心にベトナムの子どもたちが集う。来年はハノイに進出する計画だ。

毎年30%の成長中間層の親子連れ

ホーチミン市7区に2014年4月にオープンした、大型の職業体験型テーマパーク「VIETOPIA」。敷地面積は3万800㎡、建物面積2万2750㎡。インドア型のテーマパーク内には各企業の業種や商品をモチーフにしたかわいい建物が並び、子どもたちが様々な仕事を体験できるようになっている。大手の外資系企業やローカル企業が参加するアトラクションの数は現在36だ。

「人気なのは、『味の素の料理教室』、『ダッチレディのミルク工場』、『ヤクルトの微生物実験室』です。料理教室では作った料理を食べられ、ミルクとヤクルトはその場で飲める。食べたり、飲めたりできるアトラクションが子どもは好きですね」

売上は対前年比で2015年が30%アップ、2016年も同じく30%アップで約480億VND(約220万U S D)とのこと。ビジネスとして順調に成長している理由は国内では珍しい職業体験型テーマパークという新規性の他、2015年から提携している代理店の存在が大きいという。彼らのおかげで近郊の省からお客が来るようになったのだ。

来場者には団体客と個人客があり、団体客の多くは学校で、9割が旅行代理店から、1割が直接の申込み。政府系の学校は法律の規制があって代理店経由となり、インターナショナルスクールなどは直接の申込みになるそうだ。学校の内明けは小学校が7割で、中学校が3割。

ヤクルトの微生物実験室

ダッチレディのミルク工場

同伴する教師や保護者などの大人を含めて1団体が1000人ほどで、1ヶ月に6団体ほどが来場。個人客数は幅があり1日に800~1400人。週末、テト期間、6~9月の夏休み時期はお客が増えて、年間の来場者数は28万人~30万人になるそうだ。

「4~14歳の子どもが対象ですが、メインは6~10歳で約75%。ホーチミン市以外にビンズン、ドンナイ、ロンアン、バリアブンタウなどの各省から来てくれます。代理店と組むまでに時間が掛かりましたが、効果は絶大です」

料金は個人向けで子どもは平日19万VND、土・日・祝日が28万VND。大人はどちらも9万VND。団体客は割引になって平日で12万VNDほどだそうだ。

「主役」の子供のほうが高価格帯なのは当然でも、それでも高めの設定なのには理由がある。屋内施設なので広範囲での空調が必要なことや、徹底した清掃管理などで経費が掛かるのに加えて、対象顧客を絞り込むという作用もある。統計は取っていないが、子どもの両親は30~40代と若く、ある程度の収入がある世帯が多いという。

「4シートの乗用車で100台、50席のバスで30台が駐められる駐車場も人気です。団体客がバスを使えるだけでなく、中間層や富裕層の家族が週末に車で来たくなるようです」

来年はハノイに進出ダムセン公園とも協力

今年6月にはVIETOPIA内に英語塾をオープンする予定だ。「VIETOPIAで遊びながら、英語の勉強も一緒にできないか」というお客の声がきっかけとなった。指導するのは全員欧米人で、教室での学習の他、施設のアトラクションを使ったり、サッカーなどスポーツを通して英語を教える。同社ではキッズ市場で流行る分野を特に「教育」と「健康」ととらえ、資力のある親は子どもに英語などの語学や国際的な教育を希望していると考えている。新しい英語塾はそれに対応したものだ。

(左)消防士になった子どもたち (右)味の素の料理教室

また、来年にはハノイにもVIETOPIAを建設予定。当初はイオンモールロンビエン店内での展開を考えたが、諸所の事情から断念し、土地を購入したという。詳細はこれからだが、ホーチミン市のものと同程度の規模になるという。ベトナムのキッズ市場の規模は大きく、特にテーマパーク市場は伸びしろがあると考えている。

「なぜなら、ベトナムにはほぼないからです。一方、お金のある人はシンガポールやタイ、香港などへ行ってテーマパークで遊んでおり、その楽しさを知っている。一般より多少高い価格でも洗練されたテーマパークなら、ますます来場者は増えるでしょう」

同社のCEOは20年以上日本でビジネスをしてきた人で、日本の「キッザニア」からヒントを得てVIETOPIAを作った。

現在はホーチミン市11区にあるダムセン公園と協力して、公園内でのテーマパーク建設を進めている。VIETOPIAのような職業的な要素はなく、純粋なテーマパークで、海外からの資金提供を呼び掛けている。

「公園には36 haという敷地がありますが、それを生かすアイデアと資本がないので、互いに協力しながらパートナーも探している最中です」