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ユーザーが激増するベトナムの配車アプリ。世界でシェアを広げるUberやGrabが2014年に進出すると、昨年市場が急拡大。地場企業の参入も相次いだ。世界で、ベトナムで、今年も勢いが加速している。ベトナムのローカルアプリに絞って取材した。

 

 

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ホーチミン市でシェアトップのタクシー会社が昨年、独自の配車アプリ「Vinasun App」を配信。今後はアプリユーザーを増やすため、顧客にも社内にも様々な対策を打つという。
専用車両を持つ「本家」の強みとは何か?

 

仕掛けるサービス向上

ビナサンタクシーはホーチミン市を中心にドンナイ省、ビンズオン省、バリア・ヴンタウ省、ダナン、カインホア省(ニャチャン)でサービスを展開しており、全ての地域で配車アプリが利用可能だ。アプリ導入の理由にはUberやGrabのサービス拡大もあったが、その時期にサービス改善を進めていたことが大きいという。

「お客様へのサービス向上と共に、ドライバーと車体のマネジメントも課題となっており、双方の解決手段としてアプリ導入を決めました」

ユーザーが急増したUberやGrabだが、同社の顧客数はさほど減っていないという。それは、タクシーの利用者層が分かれているためだとMr. Toanは指摘する。彼によれば、配車アプリサービスのユーザーは個人利用の若者がメインで、同社では「ビナサンカード」を使う、企業のビジネスマンが多いという。これは料金後払いの法人向けカードで、既に9000社以上に使用されている。

「Uberなどが人気の理由は、ドライバーのサービスが良い、新車が多い、料金が安い、だと思います。逆に弱いのは低価格化のために小型車が多いことで、それを気にしない若い世代が利用するのでしょう」

顧客へのサービス向上のためには、ドライバーにトレーニングを行うのと同時に安定収入、特に高収入での安定を図る工夫をしているという。同社のドライバーの収入には基本給とコミッションがあり、コミッションは売上げと顧客評価(Rating)に連動している。

売上げでは1日の最低ラインを超えたら、超えた金額の一部が手当てとなる。一般的な配車アプリサービスより1㎞単位の単価が高いため、最低ラインはすぐに達成できるそうだ。顧客評価とはアプリのユーザー評価で、最高の5つ星の数に数千VNDを掛けた金額が、1ヶ月単位で支払われる。逆に1つ星が多いと罰金として値引かれることもあるという。

配車アプリサービスでのドライバーの収入は支払金額の80%ほどで、大抵は個人車なので維持費の自己負担も多く、低価格もあって正規のドライバーより収入は低くなる。相対的に本業のドライバーが優遇されることになる。

新車については車両を増強する予定で、年末までに古い車両850台を売却して、新しく1150台を購入し、現在の6100台超から6500台にする計画だ。理由は海外からの「黒船対策」というよりニーズ増で、特に地方からの要望が多いという。

「弊社のアンケートや市場調査でもお客様が一番気にするのは『料金』であり、1km当たりの平均運賃を引き下げました。また、アプリに出発地と到着地を入れると距離が計算され、画面に表示されますが、これはおよその料金であり、支払いはメーターの金額になります。これは法律で決められていることです」

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配車アプリに注力今後はユーザー増へ

一方で進めているのが「高級化」だ。新サービスの「V CAR」はトヨタのフォーチュナーとカムリを使用したタクシーで、企業の経営層などがターゲット。TAXIの標識は出していないので、ハイヤーのように利用してほしいという。6月現在は試験段階で、150台で運用中。配車の方法はアプリか電話になる。

「ドライバーには優秀な者を選んでおり、アプリからの評価も高いですね。特に宣伝はしていないのですが、口コミで広がっているようで、評判は上々です」

ただ、全体的には、アプリはさほど使われていないという。電話で呼んだり、流しをつかまえる習慣が根付いているのと、「ベトナム人はせっかちで、急ぐ人が多いから」とMr. Toan。そのため、Vinasun Appには「催促」にも使える電話機能を付けてある。ちなみにアプリで呼んだ場合の平均到着時間は3~5分とのことだ。

そこで今後はアプリユーザーを増やし、電話で呼ぶ習慣を変えていきたいという。顧客に向けては7月中旬からアプリ専用のプロモーションを展開予定で、賞品のプレゼントなどを考えているという。当初はバリア・ヴンタウ省で始めて、全地域へ展開するという。

社内的には、スタッフにアプリやシステムなどテクノロジーの教育をしていく。例えば、路上の配車係に専用デバイスを渡して、今は目視と手動で行っている配車を、モニターのマップを見て手配するなど。デバイスの導入は7月からの予定だ。

「今年は他の地域への進出予定はありませんが、海外の市場は調査していまして、ミャンマー、カンボジア、ラオスが候補です。特にミャンマーは正式なタクシー会社や強いブランドがないようなので、参入余地が高そうです」