強度な農薬を乱使用して育てた肉、野菜、魚。原料や原産地が不明な食材や加工食品。
多くのベトナム人がこうした「食」に危機感を感じ、高価でも確かな品質を選ぼうと動き出した。
「食の安全」は既にニッチ市場ではない。

 

2006年に設立されたGO CO VI NA TRADING & SERVICE(GO CO VI NA)はローカル大手の給食事業会社の一つ。全国の工業団地をメインに実績を積み、事業を拡大してきた。顧客の信頼を勝ち取れた理由は安心なメニューと豊富な価格、「GOCOスタッフ」のおもてなしだ。

日系を中心に信頼獲得毎日10万食を提供

国内有数の給食事業会社の一つであるGO CO VI NAは、顧客企業からの高い評価を追い風にして事業を拡大してきた。企業の工場やオフィスへの給食サービスを行っており、顧客企業は現在60社以上。そのうち約70%を占めてメインとなっているのが、主に工業団地内にある日系企業だ。他には韓国系企業、ローカル企業、その他の企業が各10%という割合である。地域別では、北部はバクニン省、中部はダナン、南部はホーチミン市とその近郊が中心となっている。

「企業以外にも学校や病院、プロジェクト単位での給食サービスもあり、合計で1日に約10万食を提供しています。給食の価格は幅があり、1食1万5000~8万VNDですが、ワーカーさんなど従業員に対して無料としている企業さんも少なくありません」

例えば、ある日系企業の従業員向け社員食堂では、メインディッシュが2つで、他に野菜炒め、ご飯、スープ、デザートのセットメニューを1ヶ月に3万食提供している。また、別の日系工場のワーカー向け社員食堂では、同じメニューを6万食提供している。

セットの数は同じでも食事の内容が変わるので、2つの企業の1食当たりの値段は異なるが、ご飯とスープのお代わりに制限がないのは共通している。

また同社は、顧客企業の工場内などで、ワーカーなどに向けたミニスーパーやサービスカウンターを運営しており、できるだけ低価格で日用品などを販売している。それ以外にも、忘年会などのイベント開催をサポートしていて、料理の提供などもしている。給食と比べると高級なメニューが揃い、量も多くなるため、値段は一般的な給食の3倍ぐらいするそうだ。

2万VNDのメニューサンプル

3万VNDのメニューサンプル

顧客企業内のサービスカウンター

基本的な給食サービスの流れは、食材などを工場に運んで、工場にある社員食堂の厨房で同社スタッフが調理し、顧客企業のワーカーなどに提供する。調理スタッフなど作業スタッフの人数は、給食を提供される人数の70分の1程度。例えば、1000人のワーカーに対して13~14人の作業スタッフが働くようになる。調理をするのはベトナム料理だが、地域性に富んでいるのがベトナムの特徴であり、それは料理にも顕著に表れるため、地域により味や食材を変えているという。

「北部人はしょっぱいもの、中部人は辛いもの、南部人は甘いものが好きですね。また、南部と中部は野菜をよく使い、肉や魚など様々な料理を食べますが、魚や野菜の種類が豊富でない北部の家庭は肉をよく食べます。こうした地域の事情で給食サービスの内容を変えています」

毎日大量に消費する食材なのでコスト維持は悩みの種。季節による収穫の差、干ばつや洪水などの自然災害のほか、自社や関連企業の給与上昇、ガスの価格までも影響してくる。また、CPI(消費者物価指数)も重要な指標となる。Mr. Vietによれば全業界の平均は5%前後の変動だが、食品業界は特殊で、時々10%前後の動きがあるという。当然CPIが上がれば物価が上がり、食材の価格が高くなる。

品質管理を徹底前年比70%の成長に

同社では作業員を含めた給食提供に関わる全スタッフが1年2回、保健省による食品業界の規定に沿った健康診断を定期的に受けている。

また、同社の安全要求要領書に定めた内容を関連社員にOJTで訓練し、要求事項をチェックして、問題の未然防止と再発防止を徹底させているという。安全な衛生確保の下で、生産工程がしっかり管理されており、食材のトレーサビリティも可能になるそうだ。

「使う食品は大手スーパーのBig C、METRO、Co.opmartなどから調達しています。理由は政府当局による検査が入るからと、各スーパーのブランド力(安全性確保の責務)があるからです」

このようなことからGO CO VI NAは食中毒事故などを一度も起こしたことないという。

給食を提供するGOCOスタッフたち

「ニュースでは同業他社の事故を見かけることがありますが、こうなってしまうとまず提供先とのビジネスが終わり、政府や省の判断で業務停止になる場合もあります。ですので、GOCOにとっては、調理から加工までの全ての段階で食の安全を保障するための諸原則が、もっとも心掛けている大事なキーポイントなのです」

昨年の売上は前年比で約70%上昇した。顧客企業から安心と信頼を得てきたからこそ、事業を発展し続けられたとMr. Vietは語る。拠点を置いている北・中・南の各地域で顧客数が増加しており、今後もサービスを拡大していく計画だ。