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供給増にも関わらず売れ続けるベトナムの住宅不動産。日系を含めた外資系企業の参入も顕著だ。昨年7月の住宅法改正で、外国人の購入者も急増している。これはバブルなのか?市場拡大はどこまで続くのか? 各業界の専門家たちが現在と未来を語る。

 
 

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不動産市場調査や、総合的な不動産サービスを行うサヴィルズ・ベトナム。住宅のプロジェクトは具体的にどう進んでいるのか、外国人は購入しているのか、今後の「流行」は何か。本誌で連載を持つモーガン氏が語る。

 

成長期にあるホーチミン市の市場

サヴィルズ・ベトナムの調査によれば、2016年第2四半期現在、ホーチミン市では19の新しいプロジェクトの発表があり、既存プロジェクトからの販売を合わせて、8700戸以上を供給。これは前年同期比で15%の上昇であり、全てのランクを合計して新築物件が4万100戸以上あるという。ハノイでは新規16、既存10のプロジェクトを合わせて6700戸が供給され、前年同期比で1%の上昇。新築物件は合計で1万7370戸あるそうだ。

「不動産市場は相変わらず活発で、昨年よりプロジェクト数が多くなっていると思いますし、デベロッパーはとてもアグレッシブです。ハノイよりもホーチミン市で良く動いていますね。ハノイでは超高級コンドミニアムから一軒家まで種類が豊富で、かつ長い時間を掛けて買うので、市場はある程度落ち着いています。一方、ホーチミン市の開発は比較的最近のことでもあり、スピードが早いです」

hcmc_cond_marketホーチミン市のコンドミニアム市場

hanoi_cond_marketハノイのコンドミニアム市場

コンドミニアムなどの物件は大きくA、B、Cにランク分けされるが、その基準はクオリティと価格。同社によればAクラスはラグジュアリーなどと呼ばれる高級物件で、1㎡で2200~6000USD。購入者は富裕層が多い。Bクラスは1000~2200USDの中堅物件だが、十分に高級だ。Cクラスは1000USD以下で、ベトナムの中間層でも手が届く範囲と言える。市場規模はC、B、Aの順に大きい。

「全てのクラスで高い購買力がありますが、Bクラスが最も強い。2016年第2四半期の販売戸数のうち、Bクラスはホーチミン市では約半分、ハノイでは70%以上を占めています」

ホーチミン市では2016年第3四半期から2018年にかけて3万5000戸が、ハノイでは2016年の後半に、Bランクを中心に41のプロジェクトで2万2000戸が販売予定という。

ただ、ハノイとホーチミン市では地域差があり、ハノイのベトナム人はホーチミン市のほか、ダナン、ニャチャン、フーコック島などの物件を購入しているが、ホーチミン市の人はホーチミン市の物件を購入することが多いという。ダナンなど3地域はビーチリゾートなので、高級ビラなどの物件も多い。

不動産が好調な理由は賃貸の利率にも表れている。年間のリース料金を物件購入価格で割った利率(表面利回り)は不動産価値の大きな指標となるが、モーガン氏はホーチミン市ビンタン区の高級コンドミニアム「City Garden」を例に説明する。

「City Gardenの70㎡を16万5000USDで購入したとして、年間1万5000USD(月に1250USD)でリースすると、9%になります。これはベストではないが悪くない数字です。ただ、新しいプロジェクトが次々と始まっているので、心配なのは中古市場。中古物件の需要が減り、市場は縮小していくと思われます」

手に届く価格の一軒家が増加

昨年7月には改正住宅法が施行され、外国人にも不動産の所有(最長50年)や賃貸が認められた。施行から12月までにホーチミン市で約1000人の外国人が不動産を購入したが、今年は第1四半期だけで700人が購入しているそうだ。

「外国人はリースや転売の投資用が半分、住居用が半分といったところ。外国人向けのレジデンシャルファンドが購入するケースもありますね。弊社でも香港、台湾、シンガポールのチームが営業活動をしていますが、特に台湾で評判がいいです。来越した台湾チームのスタッフが、ホーチミン市の物件を購入していましたよ(笑)」

4_amend_002ホーチミン市のコンドミニアム前年同期比インデックス

5_amend_002ハノイのコンドミニアム前年同期比インデックス

外国人が重視するのは立地や安全性のほか、同じ外国人が住んでいたり、ショッピングに便利といったコミュニティも大切で、ホーチミン市では2区やビンタン区が最近の人気。外国人が購入すると物件の信頼度が上がる効果があり、積極的に販売するデベロッパーもいるそうだ。

一方、ベトナム人は中間層を中心に購買力が盛んで、ハノイではキャッシュ、ホーチミン市ではローンで買う人が多いとのことだ。

今はコンドミニアムが主流だが、来年、再来年からは一軒家の開発・販売が拡大するとモーガン氏。投資ではなく住宅用が中心で、ホーチミン市なら9区などの、2020年完成予定のメトロ(1号線)で交通の便が良くなる地域に多い。

「ハノイには『Ecopark』や『Ciputra Hanoi』などの分譲住宅地がありますが、ホーチミン市ではこれから集中して開発されるでしょう。主に50~75㎡の小さめな3~4階建てで、コンドミニアムより少し高く、コンドミニアム購入者の手に届く価格です。また、現在のコンドミニアムには大きな差がないので、今後は個人のライフスタイルに合わせた特別なプロジェクトが増えていくと思います」