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Aさんは半年前のある週末、ベンタン市場を買物で訪れました。その際、商標登録された自社のロゴマーク入り商品の模倣品が、正規の10分の1の価格で陳列されているのを発見しました。Aさんは抗議しましたが、店側は開き直って全く相手にしてくれず、悔しい思いをしたAさんは、知的財産を得意とする法律事務所に相談しました。

そこで、ベトナムがパリ条約やTRIPS協定等の主要な知財関連条約に加盟しており、また、知的財産法が著作権、特許権、工業意匠権、商標権等の保護を規定していると知ります。Aさんの会社の商品もベトナムの法律で保護されると確認しました。

そして、裁判所による手続よりも迅速で有効とされる、各種行政措置を取ることにしました。まずはベトナム知的財産研究所(VIPRI)で侵害の鑑定依頼をし、侵害結果が出たので、次に産業財産権監査局に警告及び罰金の行政措置を求めました。また、市場管理局には市中に出回る模倣品の差押えを求め、経済警察には生産現場に踏み込んでの模倣品の破棄や回収をしてもらいました。

また、模倣品の一部が国外からの輸入と知り、税関に事前登録して、税関が侵害疑義品を発見した場合は、写真やサンプルを添えて通知してくれるようにしました。昨年末にJETROハノイ事務所が、ベトナム税関総局密輸防止局との間で水際の取締りにおける、知的財産権保護強化に向けた協力同意書を締結したためです。加えて、損害賠償を求めて民事訴訟を提起しました。模倣品を販売した店側に対しては現在、刑事裁判が係属中です。
模倣品の排除に無事成功したAさんは、今では心置きなくベンタン市場での買物を楽しんでいます。

小林 亮
Kobayashi Ryo
TMI総合法律事務所ホーチミンオフィスに勤務する、日本国及びベトナム外国弁護士。東京オフィスにて多数の東南アジア案件を担当後、2014年3月よりホーチミンオフィス駐在。
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