地道な努力が現地化へのカギ 事業展開は着々と
ベトナムヤクルトvol.10
2007年9月から「ヤクルト」の販売を開始したベトナムヤクルト。現在では国内8ヶ所に支店、16ヶ所に宅配センターを持つ(2015年3月末現在)。2014年に赴任した根本社長は、「離陸した飛行機を上昇気流に乗せたい」と決意を語る。
日本と同じヤクルトレディ 地域密着の販売手法
―― 御社は早くから海外展開をしています。
根本 最初の海外進出は1964年の台湾で、今は日本を含めて33の国と地域に拠点があります。ベトナムでは2007年9月から輸入販売を始め、同時並行で工場を建設し、2008年に竣工しました。
―― ヤクルトと言えばヤクルトレディ。地域に密着した、世界でも珍しい宅配方法です。
根本 一番重要なのはヤクルトレディ(YL)より先に、現地の社員に仕組みを理解してもらうことです。それからYLの教育を始めますから。システムの外見は難しくないのですが、人との触れ合い方や隣同士の関係が国により異なるため、海外で根付かせるにはどうしても時間がかかります。現在でもYLの定着に注力しています。
―― 宅配の方法は日本と変わらないのですか?
根本 はい。自宅地域のご近所を1件1件訪問して、商品を説明していきます。最初は社員が付き添って、互いに励まし合いながら続けます。これを繰り返してお客様を増やし、知名度を上げていくわけですが、ヤクルトのベネフィットは健康ですから、お客様が効果を実感されるまでに年月が必要です。辞めてしまうYLもおり、国を問わず地道な仕事になります。
売上げが安定するまでには10~15年かかるのが普通です。そのため、一般的な日系企業の海外駐在期間は3年程度ですが、弊社では最低で5年です。私はベトナムの前にブラジルに約10年いましたが、社内では長いほうではないんです(笑)。
―― どのくらい売れていますか?
根本 1日の売上げ本数は全国で約17万8000本です。全世界で約3000万本ですから、ベトナムはまだこれからの市場です。YLは全国で約230名、ホーチミン市で約140名(3月末現在)おりまして、1日の売上げ本数は1人200本が目安です。ベテランになると400本くらい売りますね。
ホーチミン市では約4割がYLの宅配で、残りは学校の給食、工場の社食、レストランなどです。ベトナムでは近代的な物流がまだないのと、国が南北に長いので、商品の配送には苦労しています。新しい商品を良い状態で届けたいですから。
YLたちが広告塔 新しいステップへ
―― YLを含めて、ベトナム人スタッフをどう思いますか?
根本 真面目で勉強熱心である一方、希望通りに物事が進まないと辞めてしまう人もいます。ただ、日本への尊敬の念や信頼感があるためでしょうか、会社の理念は信じてくれています。また、若い人が多いですね。YLの中心は主婦層ですが、平均で30歳前後です。ブラジルでは44~45歳が平均でした。
―― YL用のマニュアルは?
根本 フローを示したようなプログラムはありますが、ベトナム版はまだありません。日本にはしっかりしたものがありますが、国や地域の差がかなりあるため、かなりのアレンジが必要です。例えば、坂が多いといった地形によってもその内容が変わるからです。販売システムのようなものも試行錯誤して作っている最中でして、その次の目標がマニュアル作りですね。
また、ベトナムでの商品はヤクルトだけです。ベトナム人の方々がベネフィットを理解される前に他の商品を追加しても混乱するでしょうし、自社商品同士で食い合ってもいけませんから。
―― 目標を聞かせてください。
根本 ベトナムは進出して8年目ですが、日本以外で売上げが多いのは中国、インドネシア、タイ、メキシコ、ブラジル、韓国などで、ベトナムは階段を一歩上った程度と考えています。ですので、当面の目標はすべてのベトナム人にヤクルトを知ってもらうことです。
ただ、ある程度人口が密集していないとYLが効率よく動けませんから、まずはハノイとホーチミン市でPRをしたいです。テレビなどでも広告は出していますが、さほどのボリュームはありません。やはりYLが広告塔ですし、ベトナムだけの話ではありませんが、遅くは見えても人の口伝えが、結局は近道なのです。彼女たちへの教育費が広告費だと考えています。
―― ヤクルトさんらしい、長いスパンでの事業計画ですね。
根本 弊社では各国の工場からの輸出がほとんどなく、ベトナムでも国内販売だけを考えています。いわば、地産池消です。ベトナムの人口は約9000万人で、購買力の伸びしろがあります。前任社長が7年をかけてベースを作りましたから、私はようやく離陸した飛行機を上昇気流に乗せたいですね。
Yakult Vietnam Co., LTD.
General Director 根本 篤
1971年生まれ。大学卒業後に株式会社ヤクルトに入社。2001年にメキシコヤクルトに赴任、その後2003年からブラジルヤクルトに赴任し、同社の重要な市場を牽引した後、2014年3月より現職。
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