【ベトナム法律】
COVID-19は不可抗力事由に該当するか?
越の国の法律相談 No.026
不可抗力に該当する場合とは?
みなさんCOVID‐19対策でご苦労されていることと思います(本稿執筆時は首相指令16号による活動制限期間中)。一日も早い収束を願うばかりです。
ベトナムを含む世界各地で、生産や物流に支障が発生しており、契約で合意したとおりに取引を行えないケースが今後益々増えていくことが予想されます。COVID‐19が各国の法令上または個々の契約上の「不可抗力」事由に該当するのかについては、以下の確認が必要です。①国ごと・地域ごとの状況。▽法令によって工場の操業が禁止・制約されている、▽従業員が外出禁止や隔離によって就業できない、▽都市封鎖や交通遮断によって製品を運搬できないなど。②可能な範囲で必要な措置を実施しても義務を履行できなかったかどうか③契約で合意したとおりに履行できないことと①の状況との間に「因果関係」があるか、などによって異なります。
免責される内容は?
さらに、上記の諸要因によって「不可抗力」事由にあたるとしても、どのような責任がどのように猶予・免除されるかは、各国の法令または個々の契約によって様々です。一般的には、納期が遅れても契約違反とならない、という限度で責任が免除される場合が多いですが、それ以上の内容、たとえば、供給側が▽供給する製品やサービスの内容を一方的に変更すること、▽価格を一方的に増額すること、あるいは、発注側が▽ペナルティなしで注文をキャンセルすること、までは認められない場合が多く、それぞれの契約について、各国の法令または契約条項をチェックすることが必要です。
実際には、取引を通じて双方当事者間で形成されてきた信頼関係と、将来の取引の発展の見地から、当事者間で協議して、最善の対応策を検討することになるでしょう。その前提として、「不可抗力」を巡る法的な問題を整理しておくことが必要であると思われます。
小幡 葉子 Obata Yoko
日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援
長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
TMI総合法律事務所Hanoi Office
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