越の国の法律相談 No.032

①日本人がベトナムに帰化する場合

外国人が自らの意思でベトナム国籍を取得(帰化)するには、それまで保有していた国籍を離脱しなければなりません。

特例として、(a) 配偶者や実親子がベトナム国籍を有する場合、 (b)その外国の法律に違反しない限りで国家主席の承認を受けた場合など、外国国籍を保有したままベトナムに帰化できる規定もありますが、日本人の場合、外国に帰化したときは自動的に日本国籍を喪失しますので、この特例によって両国籍を維持することはできないと考えられます。

②ベトナム人が日本に帰化する場合

外国人が日本に帰化するには、それまで保有していた国籍を離脱しなければならず、本人の意思にかかわらず国籍離脱できないときは法務大臣の特別の許可が必要です。

ベトナム国籍の離脱が許されない場合としては、公租公課の未納者、刑事被疑者・被告人、公務員・軍人、離脱が国益に反する場合などがあります。

③父母の一人が日本人、もう一人がベトナム人である子の場合

この場合は、出生時に日本国籍(外国で生まれ、かつ出生により外国国籍も取得する場合は出生届とともに日本国籍の留保届が必要)とベトナム国籍(外国で生まれたときは出生登録時に両親の同意が必要。国内で生まれたときは不要)を取得することができます。
 
日本の国籍法では、22歳(2022年4月からは20歳)に達するまでにどちらかの国籍を選択しない場合は、法務大臣から国籍選択の催告を受け、日本国籍を失う可能性があります。 
 
ベトナム国籍法ではどちらか一方を選択しなければならず、特例として当該外国の法律に違反しない限り、国家主席の承認のもと2つの国籍を維持できますが、日本の法律では22歳までに国籍選択しなければならないため、それ以降この特例は適用できないと考えられます。

 

小幡 葉子 Obata Yoko
日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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