【ベトナム経営】Vol. 03
H.I.S. SONG HAN VIETNAM TOURIST CO., Ltd.
HIS ベトナム / エイチ・アイ・エス ベトナム
スタッフの販売力を強化し、進化する旅行需要に対応
地場のソンハン社をパートナーに、現在3都市・8 拠点を展開しているエイチ・アイ・エス。急増しているベトナム人観光客の訪日アウトバウンド事業やビーチリゾート開発の加速に伴うインバウンド事業などについて簾藤社長に話を聞いた。
地方自治体とタッグを組み訪日リピーター化を促進
――日本政府観光局(JNTO)主催の訪日旅行客に関する表彰式で最高賞を受賞したそうですね
簾藤 訪日送客数が評価されて最高賞の「ベスト・セリング・トラベル・エージェンシー・ゴールド(Best Selling Travel Agency Gold)」と多数のチャーター実績が評価され「イノベーティヴ・トラベル・エージェンシー(Innovative Travel Agency)」の2つの賞をホーチミン市支店とハノイ支店がそれぞれ受賞しました。
弊社のベトナム事業は日本からのお客様を受け入れるために始まったのですが、近年は訪日ベトナム観光客向けのアウトバウンド事業にも力を入れており、今では売り上げの65%以上を占めています。
――アウトバウンド事業での取り組みを教えてください
簾藤 窓口で正しい知識と経験をもとに接客ができるよう、スタッフの販売力の強化に注力しています。具体的には社員旅行や研修で日本を訪れたり、地方自治体にスタッフをインターンとして派遣して観光分野の勉強をする機会を設けています。私はベトナムに赴任して今年で5年目になりますが、当初全国で100人弱だった従業員数も今や約450人に増え、うち400人のベトナム人スタッフの8割が日本へ渡航経験があります。
今、ベトナムでは日本からのチャーター便が増えており、ベトナムから出発する飛行機を訪日旅行に参加するベトナムのお客様に販売しています。価格が抑えられるだけでなく、大都市以外の北海道や鳥取県、鹿児島県など地方都市へも170人前後の小規模のチャーター便を飛ばすことができることから、すでに訪日経験があるリピーターを対象に地方都市行きのツアーで他社との差別化を図っています。
日本各地にある弊社の支店のほか、地場の旅行会社とタッグを組み、互いに受け入れ態勢を整えて循環するビジネススタイルを形成しているのです。
――日本の地方都市に注目が集まっているのでしょうか
簾藤 そうですね。特に昨年はベトナム語の検索キーワードで、北海道や大阪がランキングの上位に入ってくるなど注目度は高まっています。
今後は、ビザが取れる方でも旅費の予算には差があるので、各々の予算や要望に応じてホテルや食事を分けるというブランドも立ち上げたいと考えています。
パートナー企業と協力し、
情報発信とソフト面の強化へ
――東南アジアの統括をされている中で、ベトナムの特徴はどういった点だと思われますか
簾藤 東南アジアの各支店が連携し、相互送客をしています。旅行業は「スーパー平和産業」ですから、宗教や政治的な問題に影響を受けやすく、近年そういった問題で東南アジアでの集客は大きく上下しています。その点ベトナムは政情も安定していて、治安も比較的良いという点でマーケットとして魅力的だと言えます。
また、アウトバンドでは今後ベトナムでも観光ビザの解禁に伴う個人旅行化と予約のオンライン化が間もなく進むと考えられます。今はそれらを見据えて「人を育てる」、「オンライン化のシステム構築」、「店舗の販売商材の充実」の準備を整えている段階です。
――今後の課題や目標を教えてください
簾藤 インバウンドでは近年、ベトナムがビーチリゾートとして日本で認識され始めたので、団体旅行や結婚式などを受け入れられるような旅行関連事業を強化していきたいです。 現在、中南部地方のカムランでホテルの建設プロジェクトを進めている中で、集客には日本語ガイドの育成やオプショナルツアーを作りなど、各分野において様々な協力企業の皆様と開発を進めていくことが必要であり、体制づくりと情報発信が重要だと考えています。
ベトナム人向けのアウトバウンドビジネスでは訪日送客数が安定してきた今、次に取り組みたいのはヨーロッパ行きの提案ですね。ヨーロッパ専門のランドオペレーターであるミキトラベルアジアと協力し、企業向けにインセンティブ旅行などを提案できるように、出向社員による指導を通じて弊社スタッフの提案力を強化しています。ヨーロッパ旅行は日本への旅行と比較されることが多く、成長過程にあるベトナムにおいて早めに取り組むべき課題だと思っています。
ソンハン社(Song Han Trading & Tourist)をパートナーに2006年にダナンに現地法人を設立。日本人とベトナム人向けに旅行関連事業を展開している。ベトナム観光総局などから実績が評価されインバウンド、アウトバウンド事業ともに受賞歴多数。
東南アジア統括営業本部 統括部長
H.I.S.ベトナム ジェネラルダイレクター 簾藤 眞太郎
SHINTARO SUDO
1997年入社。営業、システム開発を経て 2005 年からタイ・バンコク支店に3年勤務。海外営業本部海外営業戦略グループのグループリーダーを務め、2013年にベトナムに着任。2017年より本社執行役員も兼務する。
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