世界各地での音楽教育支援で得た知見をもとに、新たな音楽文化の創造に貢献

総合楽器メーカーのヤマハ株式会社の販売子会社として2013年に設立されたヤマハミュージックベトナム。楽器やオーディオ機器の輸入販売のほか、ベトナムにおける音楽の教育普及活動に取り組むなど、事業の幅を広げている。

音楽が日常に根付く国で地域に根差した事業展開を

――ベトナムでの事業内容を教えてください

 ヤマハの販売会社は世界に19拠点あり、そのなかでベトナムは設立5年の最も若い会社です。

結婚式などで良く見られるカラオケのバックバンドの幅広いレパートリーを支えるプロ仕様のキーボードや、音楽教室など教育用途での鍵盤楽器、趣味需要に対応するアコースティックギターやオーディオ機器の販売が事業の大半を占めています。 また、ベトナム市場では超低音域を再生するためのスピーカー「サブウーファー」が他国と比べてよく売れています。カラオケを中心にエンターテインメントとして音楽を楽しむための商品が老若男女問わず受け入れられていることに、ベトナムの文化や国民性を感じますね。

――御社が推進するベトナムの音楽教科への器楽教育の導入・定着化施策が、6月に日本貿易振興機構(ジェトロ)の支援プロジェクトに採択されました

 はい。ヤマハはこれまで総合楽器メーカーとして、楽器を実際に演奏して学ぶ「器楽教育」のメリットを世界各地で広めてきました。

ベトナムは2019年に学習指導要領改訂を控えていることから、2016年1月より初等・中等義務教育の音楽教科への「器楽教育」導入を推進する取り組みを始めました。2017年にはベトナム教育訓練省と「器楽教育の普及」に関する覚書を締結し、楽器や教材を提供するだけでなく、教科書の改訂支援や教員の養成、定期演奏会の開催などリコーダー教育の導入・定着化を推進しています。

また、これらの一連の取り組みは、今回ジェトロの「社会課題解決型ルール形成支援プロジェクト」に採択いただいたほか、日本の文部科学省が進める「日本型教育の海外展開推進事業」(EDU―Portニッポン)の2016年度公認プロジェクトにも選定されました。

このように多方向から活動支援をしていただけることを大変心強く感じています。

――なぜリコーダーが選ばれたのでしょうか?

ジャパンベトナムフェスティバルで現地教員による日越楽曲のリコーダー演奏を披露

 リコーダーは日本を含む世界各国の教育現場で採用されています。

歌うように簡単に演奏することができ、教員が指導しやすく、豊かな音色でハーモニーも美しい。また、1本が比較的安価なうえ、耐久性に優れ、子どもでも持ち運びしやすい点もリコーダーが選ばれている理由だと思います。

「質の高い教育をみんなに」教員の指導に力を注ぐ

――指導者の育成にも御社のノウハウが生かされていますか

 弊社は教員向けのリコーダーのトレーニングセミナーはもとより、世界各地で音楽教育活動をサポートすることで、日々研鑽を積んでいます。現地の文化をベースに、我々の持つノウハウと知識を融合させて新しいものを作っていくことが重要と考えています。

器楽教育が義務教育に導入された2019年以降も引き続き、協力関係を続けていきたいと思っています。

――これからの計画や展望を教えてください

各地の小学校教員向けにセミナーを定期的に開催している

 商品を販売する直営店舗や音楽教室の展開を進めたいと考えています。

ベトナムでは現在、子どもの習い事として音楽教育が注目を集めており、経済の発展に伴い、市場の拡大が予想されています。世界各国で展開している「ヤマハ音楽教室」をベトナム市場にも導入し、成功に導きたいです。

これまでに、髙島屋さんやイオンモールさんでプロモーションイベントを開催させていただきましたが、その際に「ヤマハの商品がどこで売っているか分からない」というお客様の声を多く耳にしました。実際に商品に触れた事で購入していかれた方も多く、お客様と直接接する機会が、圧倒的に足りていないのだと実感しました。

ベトナムでは「ヤマハ」といえばバイクのイメージが強いので、今後は音楽の分野でも存在感を高めていきたいです。

COMPANY INFO
ヤマハ株式会社の販売子会社として2013年に設立。楽器、PA、AV製品の輸入販売や音楽普及事業を行う。また、2017年に「グッドデザイン大賞」を受賞したカジュアル管楽器「ヴェノーヴァ/ Venova」をベトナムでも販売開始するなど、新しい取り組みを積極的に行っている。
ジェネラルダイレクター 谷 真琴
MAKOTO TANI
1975年生まれ。1998年にヤマハ株式会社入社。電子デバイスの海外営業や教室事業に従事したのち、2007年より7年間、カナダとアメリカでピアノや管楽器の販売・マーケティングに携わる。2017年9月より現職。