賢者の税務・会計術 vol.006

条件次第で、移転価格文書作成は免除

こんにちは、AGSの辻です。前回、関連者間の取引価格(移転価格)が適正だと説明するために移転価格文書の作成が必要であり、マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書の3種の文書によって構成されるとご説明しました。

しかし、実はこの移転価格文書はすべての企業に作成義務があるわけではなく、以下3つの条件をいずれか1つ満たす場合、文書作成の免除規定が適用されます。

①売上高が500億VND未満、かつ関連者取引高が300億VND未満であること。

②売上高が2000億VND未満、かつ無形資産の使用や開発による収益や費用が発生せず、単純な事業形態であること。さらに、営業利益率が以下の条件を満たすこと。
・販売業:5%以上
・製造業:10%以上
・加工業:15%以上

③事前確認制度の合意書を締結しており、当該合意書に関する年次報告書を提出していること。

免除規定は移転価格文書の作成のみ適用

なお、3つの移転価格文書の内、国別報告書に限っては、他国の“究極の親会社”に、当該国における提出・保管義務がある場合、もしくは、在ベトナムの“究極の親会社”に、18兆VND以上の連結売上がある場合にのみ、ベトナム税務当局への文書提出義務が発生します。

この免除規定に関して留意すべき点は、この免除規定はあくまでも移転価格文書の“作成義務”に対するものであり、関連法令には、これがすなわち移転価格に関する税務調査の実施をも免れるものとは明記されていないということです。

また、法人所得税申告書の別表は移転価格文書とは別に作成が必要となる点にも留意が必要です。

誌面の関係上、説明を割愛している部分がありますので、詳細は専門家に直接ご相談頂ければと思います。

辻 雄太
米国公認会計士。日本の大手メーカーでの勤務を経て2015年より現職。国際税務・国際会計基準対応などに強みを持つ。
A. I. Global Sun Partners JSC
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