越の国の法律相談 No.035

1.PPPによる投資の範囲の限定

2021年1月施行の官民連携パートナーシップ(PPP)法では、63号政令下で認められていたPPPによる投資の対象分野のうち、◇文化・スポーツ・旅行、◇国家機関の事務所、国家幹部の住宅、社会住宅、再定住住宅、◇科学技術、◇水文気象学、◇ITアプリケーション、◇農業および農村開発、農産物の生産・加工、販売促進サービス、◇商業インフラ、◇都市区・経済区・工業団地・工業クラスター、◇ハイテク技術インフラストラクチャ、◇中小企業支援のための共有オフィスなどが除外。その結果、対象分野は、◇交通運輸、◇発電所・送電線(水力発電および電力法による国の独占案件を除く)、◇灌漑、上下水道、排水・廃棄物処理、◇医療、教育・訓練、◇情報通信インフラの5分野に限定され、関連して投資方針決定権者から省級人民委員会が除外されました。範囲を限定することで投資を一定の分野に集中し、活性化することが目的と考えられます。

2.損益分配ルール

PPP法では、収益がPPP契約において定めた財政計画の125%を超過する場合は、監査を受けた上で、超過分を政府と投資家で半分ずつ分配します。他方、収益がPPP契約において定めた財政計画の75%を下回り、かつ一定の条件を満たす場合に、下回った分の半分を政府が負担します。このような損益分配ルールを設けることで、投資家の投資を促す狙いがあるとみられます。

3.投資資本金の設定

PPP法は、O&M契約に基づくプロジェクトを除き、最低資本金の額について経済社会条件が困難である地域、または医療・教育・訓練分野での投資プロジェクトの場合は1000億VND、その他のPPPによる投資プロジェクトは2000億VNDに設定しました。
 
PPP法は長年、法整備が望まれており、これによりPPPによる投資が活発化することが期待されます。

 

小林 亮 Kobayashi Ryo
日本国及びベトナム外国弁護士。東京オフィスで多数の東南アジア案件を担当後、2014年4月より現職。1年のアメリカ留学を経て、2019年9月に復帰。
電:(028) 6299 0666
メール:hochiminh@tmi.gr.jp
ウェブサイト: http://www.tmi.gr.jp