【ベトナム法律】大規模火災を貴重な教訓として生かせるか?
越の国の法律相談 No.009
強制火災保険に違反すると罰金も
2018年3月下旬、ホーチミン市内の高層マンションで火災が発生し、13人が死亡したというニュースは、まだ記憶に新しいところです。
これを受けてハノイ市・ホーチミン市の消防警察は、高層マンションの消防安全基準適合性を一斉に調査し、多くの違反物件を摘発・公表しました。
一方で、その前月である今年2月、強制火災保険に関する消防法施行政令が改正され、4月から施行されています。
強制火災保険制度は、2001年から施行されている現行の消防法のもとで導入されたもので、2003年の政令により、具体的な加入対象を明確化するための「火災・爆発に脆弱性のある建物」リストが制定され、その後の改正を経て、2018年の上記の政令によって、加入対象を拡張した新しいリストに置き換えられています。
共同住宅・宿泊施設については、2003年以降現在まで、「5階建て以上または5000立方メートル以上」の物件が、すべて強制火災保険に加入することが義務付けられており、これに違反した場合の行政罰金(2013年12月以降の罰金額は、個人の場合3000万VND以上5000万VND以下、法人はその2倍)も規定されています。
保険の加入率は今現在も伸び悩み
ところが実際には、義務化から十数年たった現在でも、なお強制火災保険への加入が進んでおらず、2018年4月のハノイ市消防警察の発表によると、ハノイ市内の高層住宅718棟のうち、強制火災保険に加入しているのはわずか179棟(約25%)に過ぎないことが判明しています。
今回のマンション火災を貴重な教訓として、消防に対する国民の意識が向上し、当局による厳正な対応が進められることが期待されます。
小幡 葉子 Obata Yoko
日本国及びベトナム外国弁護士。JICAベトナム法整備支援
長期専門家などを経て、2013年4月より現職。
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