世界で挑戦する日本発ブランド
ベトナムではシェア20%が目標

カード会社「ジェーシービー(以下JCB)」子会社の「JCBインターナショナル」が2020年11月、ベトナムのノンバンク最大手「FEクレジット(以下FEC)」との提携を発表した。同社の宿院氏に、今回の提携の経緯や今後の展望などについて聞いた。

決済以外の価値もプラス
日本イメージのサービス提供

――ベトナムでの事業開始の経緯を教えてください

宿院 ベトナムで事業を開始した1991年当初は、主に日本人の会員さま向けにJCBカードをご利用いただける場所を拡大させるというものでした。日本発の国際カードブランドということもあり、会員さまの多くが日本人です。そのため、日本との往来が盛んな地域を中心に加盟店の開拓から始め、そして現地でのカード発行へとその幅を広げていきました。

従来、ベトナムはタイ拠点から出張で対応していましたが、2011年にヴィエティン(Vietin)銀行で、2012年にはベトコム(Vietcom)銀行やサコム(Sacom)銀行と、JCBカードを発行いただける銀行が広がっていったことにより、出張ベースでは対応できる範囲が限定的になってしまうため、ベトナム現地に拠点を置いて活動すべきと判断しました。2013年にまず国営銀行が集まるハノイに、その後ホーチミン市にも駐在員事務所を構え、現在に至ります。

――JCBカードの強みとは?

日本人渡航者数の上昇とカード発行ビジネスを見据えた活動の結果、提携銀行が拡大。2019年にはベトナムでのJCBカード会員数が100万人を突破した

宿院 多くの方がクレジットカードといえば、ビザ(VISA)やマスターカード(Mastercard)を想起されると思います。正直に申し上げると、決済のネットワークや技術力においては、残念ながら差があると認めざるを得ません。そのような状況でも、当社は日本国内で自ら加盟店を開拓して、カードを発行しているという経験値と、日本企業ならではの付加価値提供により、独自の地位を確立しようとしています。

アジア各国から日本へ渡航される会員さまには、家電量販店や薬局での割引など、旅行先で喜ばれる優待を各取引先と協業して提供しています。ベトナムにおいては、日本をイメージするサービスをベースに、例えば、日本料理に加え、ベトナム料理や中国料理など100店舗以上のレストランで割引などの優待が受けられるといった、現地の会員さまに喜んでいただける特典を用意しています。

提携銀行、加盟店は増加
便利な社会構築に協力したい

――FECとのカード発行提携が発表されました

宿院氏とハノイオフィスの皆さん。ビジネスではパートナーと長期的な信頼関係を構築すべきと考え、業務は真摯な姿勢で臨み、業務外の交流も大切にしている

宿院 FECとは2016年より交渉を開始して、2020年にようやく発行が実現しました。ノンバンク最大手で、銀行とは異なる顧客層を保有する同社との提携は、JCBブランドの領域を拡大する上でも重要なことであると感じています。新たなニーズが生まれ、それに対応もしくは先回りして提供していくことで、JCBブランドの厚みを拡大していきたいと考えています。

今回の提携により、ベトナムでのJCBカード発行会社は2020年末時点で計15社となりました。2020年は特に、コロナ禍によって海外でのご利用が激減するなど苦労もありましたが、FECのほかにも、リエンベトポスト(Lien Viet Post)銀行やMクレジットでもカード発行が実現できたのは嬉しかったですね。

――今後の目標を教えてください

宿院 決済における国際ブランドの役割は、カード会員、発行銀行、加盟店管理銀行、加盟店を結びつけることであり、差別化するには規模と機能が重要になってきます。現在の業容では競合他社と戦うのはまだまだ厳しいです。また、日本想起で得られる規模には限界があります。なので、日本だけでなくアジアのブランドとして、アジアで生活する人々に付加価値を提供していくために何をしていくべきなのか、それを模索し挑戦を続けることが現在の課題です。

カード発行会社数では20社を目指していきたいですが、重要なのはその数ではなく、カードを利用してもらう機会を増やすことです。コロナ禍の環境下でも、ベトナム国内のカード利用金額は順調に拡大したので、この右肩上がりの角度をさらに上げて、市場シェア20%を狙いにいくことが長期的な目標です。将来的には、ベトナムで間もなくメトロの運航が開始されるので、カードがそのまま乗車券として利用できたり、電子マネーのようなキャッシュレス社会の創成のお手伝いができればとも思っています。

ベトナムドンの小額紙幣が財布に増えたり、ATMからは20万VND紙幣しかでてこなかったりと、ベトナムでは度々不便だと感じることは多いです。しかし、それがカード支払いであればその不便さを軽減できます。ベトナム国内発行のカードであれば、ベトナムドンでの支払いとなり、利用の度に携帯電話にメッセージが送られてくるので、セキュリティの面でも安心です。カードの発行基準は銀行により異なりますが、カードを取得の際は、ぜひJCBカードを選択いただけると幸いです。

 

COMPANY INFO
東京都港区に本社を置く、日本発唯一の国際カードブランド運営会社。1961年に日本でクレジットカードビジネスを開始し、1981年から海外へと展開。ベトナムでは1991年に事業を開始した。現在は、アジアを中心にカード発行ビジネスを展開し、世界で加盟店開拓を行っている。
Chief Representative  駐在員事務所長  宿院 一馬
KAZUMA SHUKUIN
1975年生まれ。北海道札幌市出身。大学卒業後の1999年にJCB入社。総合企画部、国際本部国際統括部営業戦略グループ次長などを経て、2020年3月に来越。現在は、ハノイ、ホーチミン市の両オフィスを行き来しながら業務に従事している。