SSI証券のベト株探訪記 No.008

成長率の減速がようやくストップか

第3四半期のGDPの成長率は前年同期比6・88%で、第2四半期の6・73%を上回りました。成長率は微々たるものですが、2017年第4四半期以降の減速傾向に歯止めがかかるという点が重要と考えられています。

この成長率の伸びは、自動車、医薬品、鉄鋼、衣料品、石油精製製品など多くの産業が高い成長率を示したことが影響しています。

保護政策(政令116/2017/ND―CP、2016年の薬事法)により、自動車や医薬品はここ数ヶ月で着実に向上しています。

自動車産業の成長率は前年同期比16・3%増となり、直近21ヶ月間において高水準を記録しました。製薬業界は同25・9%増加し、今までで最高値を記録しました。

さらに、1~9月のベトナム繊維・縫製産業の輸出量は前年同期比17・1%増で、2015年以来の最高値を記録したほか、今年半ばにギーソン製油所が開業したことで、石油コークス産業・精製業が53・1%成長しました。

また、建設業が前年同期比+9・2%と、GDPの成長率において、主要な促進力の1つとなりました。

農業成長率が低下観光客も伸び悩み

しかし、積極的な動きだけでなく、第3四半期の指数はいくつかの問題を包含しています。

まず最初に、農業の成長が減速していることです。良好な天候と高水準の価格設定によって+3・28%を記録した第1・2四半期の農業成長率から、今回は+2・2%に低下しました。上半期に急騰した米の価格が低下したことと、輸出量の減少が原因です。

次に、宿泊業・飲食産業に関して、外国人観光客は特に中国人観光客の減少により、前年同期比で+4・04%に留まりました。

米中の貿易競争は中国の経済成長を低下させ、中国におけるベトナムの製品やサービスに対する需要を引き下げると想定されます。これは2018年に限った問題ではなく、今後数年間続くと思われます。

グエン・ドゥック・フン・リン Nguyen Duc Hung Linh
個人向け分析・投資コンサル部門マネジャー。シンガポールでMBA、ハノイで学士号を取得。2011年より現職。
Saigon Securities Inc.
ウェブサイト:www.ssi.com.vn