EY大手会計事務所のベトナム事情 No.043

EYベトナムの小野瀬です。第43回の対談は、日系企業担当の守山成寿マネジャーです。

小野瀬 近年ベトナムは海外から投資先として非常に注目されています。すでに数多くの日系企業がベトナムに進出しており、日本から多くの出向者が現地法人に派遣されています。

今回は出向者の給与に関する税務上の留意点について教えてください。

守山 出向者の給与の支給方法は会社によって様々です。今回は、次の場合を前提にお話します。
・日本法人とベトナム現地法人が、それぞれ日本及びベトナムの銀行口座に給与を支給
・日本法人が支給した出向者の日本口座の給与を、ベトナム現地法人が精算

外国契約者税
FCTにご用心

代表的な論点として、外国契約者税(FCT)が挙げられます。FCTは、外国法人等が内国法人等と契約を交わし、ベトナム国内でサービスの提供を行った対価として得られる所得に対して課せられる税金です。

日本法人が立て替えて支給した出向者の給与をベトナム現地法人が精算する場合、ベトナム現地法人が日本法人から人的派遣サービスの提供を受けた対価の支払いとみなされてFCTを課税される可能性があります。

クレジットノート等の精算書だけではなく、立て替え払いの事実を示す契約書等の根拠資料の準備が必要です。アサインメントレター(任命書)等で日本法人が出向者の管理責任を有すると記されている場合にも、同様に注意が必要です。

給与支給額の
根拠資料の確認を

小野瀬 つまり単純に給与の立て替え払いなのに、人材派遣サービスを受けたとみなされてFCTを課税されてしまうということですね。他に注意すべき点はありますか。

守山 日本法人の任命書やベトナム現地法人との労働契約書への記載についてです。ベトナム現地法人が直接支給する給与額のみの記載や、そもそも給与金額の記載が無いなど、実際の給与の支給総額と異なる場合には、税務調査の際に資料の不整合を指摘され、当該給与の法人税法上の損金算入が認められないリスクがあります。

小野瀬 万が一に備えて確認した方が良さそうですね。

小野瀬 貴久 Onose Takahisa
日本国公認会計士。大手監査法人にて監査や株式公開業務に従事後、EYジャカルタ勤務を経て2011年より現職。
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