EY大手会計事務所のベトナム事情 No.049

COVID-19
関連費用
税務上の取り扱い

EYベトナムの小野瀬です。第49 回の対談は、日系企業担当の守山成寿マネジャーです。

小野瀬 2021年度、COVID-19に関連してベトナム政府から数多くの企業支援施策が公表されました。税務上の取り扱いについて、最近の状況を教えてください。

守山 2021年10月17日に税務総局が公表したオフィシャルレターにおいて、海外出張時にベトナム国内外で発生する隔離費用、従業員に対する感染拡大防止費用、勤務・飲食・宿泊を一ヶ所の現場に集約する所謂「3 on site」の操業体制に従事する従業員の食費・宿泊費について、個人所得税上は非課税所得、法人税上は損金算入費用と明記されました。
 
一方で、1つのルートのみを通って従業員を宿泊施設から生産現場に輸送する、所謂「1ルート・2スポット」の操業体制に係る費用の取り扱いは依然として不明確という問題があります。

小野瀬 個人所得税の課税対象とならない範囲がある程度明確になり、取り扱いが改善されたということですね。これから多くの日系企業が決算期を迎えます。製造業を中心に多くの企業で操業度の低下が見込まれますが、留意点はありますか?

固定製造間接費の
在庫配賦について
 

守山 税務ではなく会計に関する問題となりますが、所謂「アンダーキャパシティ」の問題があります。ベトナム会計基準では、実際の生産水準が正常生産能力を下回った場合、配賦されなかった固定製造間接費(原価差額)は発生した期間の費用として認識する必要があります。具体的には、工場の建物や機械設備の減価償却費など、生産量にかかわらず毎期一定額で発生する費用について、実際生産量ではなく生産設備の正常生産能力に基づいた配賦計算が必要となり、実際生産量に基づく配賦計算により生じた原価差額は全て発生した期間の費用となります。
 
正常生産能力は、「正常な状況で期間を通して平均的に達成されると期待される生産量」と定義されていますが、実務では直近の平均操業度や最大生産能力などを意味することがあるため、あらかじめ会計事務所と協議しておくことが必要です。

小野瀬 貴久 Onose Takahisa
日本国公認会計士。大手監査法人にて監査や株式公開業務に従事後、EYジャカルタ勤務を経て2011年より現職。
Ernst & Young Vietnam HCMC Office
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